顔が浮かぶ瞬間

自分が接客していて、さてどうする?!と思うことがある。
イレギュラーなお願いをされたとき、
多分お断りしなければいけないのだけれど、それでも要望を最大限聞いてあげたいとき。
いつもどうしよう、と思った瞬間、あの人ならどうするだろうか?そう胸に浮かぶ人ような
私にとって接客の師匠や、先輩である素敵な方たちがこの同じ空の下にいる。

別にとんでもなく無茶な要望という訳でもなく、
取り立てて大騒ぎをするような事ではなかったのだけれど
ちょうど昨日はそんな日だった。

結婚記念日での利用、チェックインを担当し、偶然夕食も担当だったお客様。
国産ワインそのエチケットが和紙のような紙で出来ており素敵なので
ボトルの写真を撮らせて欲しい、という。
その方グラスでオーダーされたので、
お客様にはボトルからはがして差し上げることは残念ながら出来ない。
それを承知の上で写真を撮らせて欲しい、という事だったのだろうけど、
きっとこの方たちは本当はそれを持ち帰りたいんだろうなぁ、と思った。
昨日はそれで写真だけ撮り、
その後は何事もなかったかのように食事されて満足してお帰り頂いたのだけれど、
せっかくなので記念に差し上げたいと。

今朝そのお客様と朝食でもお逢いした。
きっと私の胸に浮かんだ人たちはこのままでは終わらせないだろうな、と
そのお客様が朝食を召し上がる姿を見ながら思った。
そして、ふと思い立って、自分のエリアではなかったのだが
食後のコーヒーを召し上がっているお客様の元に行き提案。
昨日お気に入り頂いたワインのボトルが空いたら、エチケットを送りますね、と。
今日、運よくそのボトルが空いたので捨てずに取り置いてもらい、
丁寧に剥がしてエチケット保存用のシールに貼り付けて、手紙を付けて郵送した。
きっと数日中には手元に届くはず。

もっとスマートなやり方があったのかもしれないし
別にそこまでする必要もなかったのかもしれない。
だけど、自分がお客様と接していて後からこうすればよかった、という思いは残したくない。
だってそのお客様との出逢いはそれきりだから。
勿論リピートして頂いて再会出来る可能性だってある。
でも現時点では、そのお客様との関係はチェックインして
チェックアウトするまでのわずかな時間しかない。
その中で最大限お客様にいい思い出を持ち帰って欲しい。

そして、いい加減な接客をしたくない、というのにはもうひとつ理由がある。
その私の胸に浮かぶ方達に対して恥ずかしい接客はしたくないのだ。
私にとっての彼らは憧れでもあり、また多分ライバル(勝手にそう思ってるだけだが)でもある。
だから私はいつでもベストを尽していたい。