霧のトンネルを抜けて

実は帰りを1日遅らせて昨晩一晩都内の友人宅に泊めてもらった。
いつも突然の訪問だが、温かいご飯で迎えてくれる。
ああ、ありがたや。ありがたや。

そして昨夜遅くの帰り道、高速を一路北上し、
前に進むごとに下がる気温表示の数字。
それにしても都内は暖かい。
昼間は20度近いし、夜でも14度だった。
テレビではクリスマス商戦のCMが流れているけれど、
どうもウールのコートのマフラーもしっくりこない感じ。
いくら都内でももう秋も深まり、冬の足音が聞こえてきてもいいはずなのに、
なんだかまだ秋の訪れを感じるかどうか、という雰囲気でちっとも季節感がない。

軽井沢と言えば霧だけれど、高速を降りてつづらおりの山道をぐんぐん上ると、
坂道の途中から突然目の前は真っ白な世界。
そこがまるで何かの境界線みたいにモクモクと霧が湧いて出ており、
センターライン頼りに走るのもちょっと恐いぐらい。
あまりに景色も何も見えないと現在地はおろか体の平衡感覚すら危うくなりそうで
目の前にガードレールの反射板が突然現れてぎょっとしたりして。
その霧のトンネルを抜けてほっとしながらふと車の気温計を見たら、0℃!
2時間足らずで気温差14℃。

ようやく本来あるべき季節、闇の中に戻ってきた。
都心の空は明るすぎる。毎日が満月の夜みたい。
車を降りると、きりっと澄んだ冷気。
思いきり吸い込むと鼻の中がつんと痛い。
そして伸びをしながら見上げると、
本来あるべき闇の中に宝石箱をひっくり返したみたいな見事な星空。
北斗七星のひしゃくが東の空からのっそり顔を覗かせている。

嬉々としながら冬の空気を体全体で感じていたつもりだったが
・・・ブルブルッ ヘックショィ
駄目だ。温度差に身体が付いていけない。
喜んでいる場合じゃない。私寒いの大の苦手だったっけ。