はじめまして、じゃじゃ馬さん

爺太を売り、徒歩でテクテク帰り道。
車を降りる瞬間、お世話になりました、本当にありがとうと
車にむかって深々とお辞儀してお別れ。
とうとうやってきたこの瞬間。

実際は何だかあっけなく手続きして、引き渡し。
そりゃあそうだ、車の売買契約なのだから。
そしてお別れしたその瞬間から、もう私の物じゃない。

あちこちぶつけてあちこち出かけて、泣いたり笑ったり。
荷物も人も乗せて沢山走ってくれたな、なんて
歩きながら考えてたら、鼻の奥がつんとした。

秋晴れのさわやかな風にのって、
あちこちからキンモクセイの香り。

この香りとともに彼女(彼か?!)の事を思い出そう、
そして爺太と同じくらい新しい子を大事にしよう、そう決めた。

それから2時間後、中古車屋さんの店長さんが
遠い所からはるばる乗ってやってきた、
新しい子、ポロGTI。

これからどうぞよろしゅうに…

が。マニュアルミッションなんて10年ぶり、初心者と変わらない私。

…走れない。
クラッチがつながらない。
エンストすること数十回。
シフトチェンジミスでガリガリ嫌な音。

しかもドイツ出身の彼女はウィンカーとワイパーが日本車とは逆、
だから間違えること数知れず。
これじゃ公道なんてとても走れない。

納車されたのは会社。
そもそも帰れない、大好きな釣りにも行けない。明日からどうしよう!

予想はしていたが予想以上にひどい。
だって動かせない。
こりゃ大変だ!!!

少し離れたご迷惑にならない広い駐車場まで別の人に移動してもらい、
ひたすらクラッチを繋ぐ所から練習。

駐車場にはテント泊の準備をしていた
自転車旅行中の若者が高見の見物。

なかなか見られるものじゃない。
さぞ面白かっただろうな。

試行錯誤すること2時間。
どうにかこうにか乗れるようになってきた私。
自力で会社まで帰還。

そのあと会社から家に帰りがてら遠回りしようと思った。
でも急勾配の坂ばかり。
坂道発進が出来ない。無情に下がる車。(後続車がいればとっくにぶつかってる)

焦ってクラッチを踏まずにギアが入らないと泣きそうになる。

あ、クラッチは繋ぐ瞬間だけ踏めばいいんだった。
クラッチ踏まなきゃギア入らないじゃん。

でもやっぱり発進出来ない。

日暮れて道遠し。
半ベソで(いやほとんど泣いてた)
家の周りを5周、6周…夜人通りも車もないけど、
別荘地内に響く低いエンジン音と衝撃音(エンストした時の音)。
ご近所の皆さんごめんなさい、悪気はない。

この子をまずは知ること。
私の意図を汲んで動いてもらえるよう
仲良くなるために大切なのは時間。

爺太とは6年の付き合いだった。
ポロとの付き合いは、まだ始まったばかり。

あ…それって人間関係も一緒だ。
もう何度目か分からないエンストの瞬間に、そんなことを、はっと気づいた。

乗る人によっては
まるで心を開いてくれないひねくれ者。
そして動き出せばかなりのじゃじゃ馬さんだ。
小さいけれど馬力はある。(あれ、もしかして私の事?!)

とにもかくにも仲良くなるにはまだまだ先は長い。

そもそも会社まで出勤出来るのかすらかなり疑問。(たった2キロなのに!)
あまりに飲み込みの悪い酷い運転ぶりに
車が先に壊れそうな気がしてきた。

そして余談。
夜帰ろうと駐車しておいた車に戻ったら、
ドア(窓ではない)全開!
な、な、なんとドアをしめ忘れた。

何度もいうがドアである。ドア。
乗り降りするあの扉である。

鍵をかけ忘れた
窓をしめ忘れた

よくある話だけどまさかドアとは。

縁あって新しいオーナーになった、
こんなへなちょこでマヌケで至らないぬっこですが、
どうぞよろしく。

あー不安!!!