新緑は一つの色じゃない

玄関に座り込んで空を見上げていたら
冬を南で過ごしたツバメが虫を捕獲するのに忙しく空を飛びまわっていた。
いつも散歩に出かける川で過ごしていた白鳥親子は、いつしか北へと旅立っていた。
季節は気づけば、春まっただ中。なんせもう4月も半ばを過ぎた。
 
冬の寒い時期を過ごした枯木立の先の新芽は茶色にふくらみ
やがて淡い緑の小さな芽を出し、日々緑色を濃くしていき、
山や大地全体は、生きる力を満ち満ちていく。
 
新緑、と一口に言うけれど、この「緑」。
木によっても、また時期によっても色は「緑」という単色では表現しきれない。
浅葱色(あさぎいろ)、萌黄色(もえぎいろ)浅萌黄(うすもえぎ)、鶸萌黄(ひわもえぎ)色、若葉(わかば)色
草色…日本名の緑を調べようとすると、ものすごい数の緑に属する名前が出てくる。
 
ちょうど今時期、さわさわと葉を揺らす街路樹のケヤキの彩度の高い黄色がかかった緑。
このあたりの雑木林にあるコナラの木の新芽は銀色がかかった淡い淡い緑。
ケヤキの緑は、黄緑か若草色だろうし、
そしてコナラのシルバーグリーンは「若芽(わかめ)色」だろう。
木によっても、時期によっても大きく違う緑。
それが自然とグラデーションになり一斉に萌える。
まるで示し合わせたかのように、だ。
 
この木の緑は、何色になるんだろう。
一概に「緑」「新緑」とくくってしまわずにこの緑は?なんて
そんな事を考えながら眺めていると、どれだけ時間があっても退屈しない。
 
明日は雨だという。
旅に出る日が雨だというのも幸先が悪いと思いがちだけれど、
雨が悪いものだというイメージをどうにかして払拭したいと思い続けてきた私。
特にこの時期の雨は、私は好きだったりする。
新緑の「緑」がいっそう雨に洗われて鮮やかになるからだ。
そして雨上がりの土の匂い、鮮やかさを増した新緑の中の散歩は、小さな幸せを感じるひととき。
 
さて、大きな荷物もあらかた準備が整った。
明日から2泊、行ってきます。