顔が見えないからこそ

予約は顔が見えない仕事だ。
一番最初に話す窓口で、しかもいらっしゃるその日まで
ゲストによってはメル友のように何度もメールのやりとりをしたりする。
だが実際にいらっしゃった日にお会いすることはほとんどない。
だからその方がどんな風貌の方で手配したものが実際にうまく行ったのか、
本当に喜んでいただけたのか、目にすることはほとんどない。
また試食会で料理を目にすることはあっても
実際のオペレーションの中で、どんな料理がどんな風に出されているのかも見る事はない。

顧客管理の仕事も同様。
出発したお客様のデータを整理すれば、その方の趣向やいらっしゃった車種や
またアンケートやお手紙などで滞在中に感じた事を目にすることは出来る。
だがその方に返事を書いても実際に会う訳ではない。

接客が好きで入ったこの仕事の中で一番寂しいと思う事。

せめて手配するホテル内のレストランや外食を希望するお客様に紹介する地域のレストラン。
それらを自信を持って勧めたい。どんな味でどんな雰囲気なのか知りたいと思う。
それゆえ予約内スタッフの親睦も兼ねているが周辺レストランに皆で食べに行く食事会が定期的に行われる。
実際のお店の雰囲気やまた料理もガイドブックに書いてあるだけでは分からない。
行ってみればどんな所か分かるし顔馴染みになっておけば手配するときに多少の融通もきいたりもする。

そんな中でうちのレストランで出している誕生ケーキがどんな物か見たいという話になった。
また実際にサーブされて味わううちの料理を食べて見たい、と。
混みあわない日に記念日用のケーキを手配し、料理も実際に予約して食べよう、と。
普段事細かに聞かれる料理内容。メニューを読み上げるだけでは分からない。

・・・なんて大義名分で、ただ単に美味しい物が食べたい人が集まっただけなんだろうか。
そんな気もする。