マグロになった意味

今日もマグロな1日。私の中でもう『ランナー=マグロ』と勝手に命名
というか、いつまでこのマグロ生活は続くんだろうか。
ひたすら皿を下げ料理を運び、終わればブラシで厨房の床をワシワシ磨き…。
正直体力勝負の下働き状態。
でもここ数日で見えてきた事もある。
私だってただ言われて皿を下げつづけ床を磨いていた訳ではない。

料理の出し方、説明、あとは厨房の方達とのコミュニケーション。
生ビールやその他の飲み物の作り方や要領。
自分の仕事がひたすら単純だからこそ、他の人達の動きを観察できる。
料飲初心者の私にとっては、非常に勉強になる。
どうして私が毎日床を磨かなきゃいけないんだとか、そんなプライドは要らない。
要はなんだってやるというのが私のスタンス。
だったら、ここから学べる事は沢山あるはずだ。
ああここのテーブルの料理が下がるから長盆が必要だ、
ここのお客さんそろそろ次の料理の声がかかりそうだな。
新たに料理を運べば、大量にお皿が下がる、その前に洗い場周りを片付けておこう。
ただそこにある皿を下げ、指示を出された場所に料理を運ぶだけでは
せっかくマグロになった意味がない。
そんな事を思いながらグルグル回るうちに何となくここのレストランの仕組みや流れが見えてきた。

この歳でそれなりにキャリアを積んできた自分が
下働きみたいな仕事をするのはプライドを傷つけられた気がしないか?と
先日一緒に飲みに行った支配人候補の女性に言われたけれど
自分のキャリアなんてどれだけのものだろう。
業に従ってこそのチームワークだ。1人で仕事をするんじゃない。
だから私は下働きみたいなマグロだってなんだってやる。
何事も謙虚が一番。

終わりのミーティングの時、
この間上手に注げなかった生ビールをざばっと捨てられ
床磨きの仕方について私にこっぴどく文句をつけた人からコメントがあった。
今日のランナーの動きがよかった、と。
汗だくでハンドタオルを頭に載せてワシワシ床を磨く姿を見た厨房の人が
なんだか虐められてるみたいで可哀想だと同情された。
ヨロヨロおぼつかない手つきで大量の荷物を持って階段を上がっていたら
手伝おうか、と声をかけてくれて扉を開けてくれた。
暗い山道を1人で歩いて帰るのは危ないし不安だろうと
みんな口々に自分が送ろうか?一緒に帰ろうかと声をかけてくれた。
何だか少しだけみんなが優しくなった気がする。

もともとフロントや予約でキャリアを積んできた私。
フロントに入れなくてもここの環境に慣れて流れをつかむには
右も左も分からない料飲から初めてよかったのかもしれない。

気付けば明日で1週間。
足の裏が痛くてジンジンするしまだ重い物を運ぼうとするとヨロヨロでおぼつかないが
最初程の酷い筋肉痛からは開放されつつある。
ここでの仕事はまだ何も見えないけれどとにかく無駄に過ぎた1週間ではなさそうだ。