道は繋がってた

6年前、私はとある地元のホテルで働いていた。
私のホテルマン人生全てもの始まり、である。
そこでは宴会もディナーも(あくまでヘルプだったが)
ラウンジもフロントも布団敷きも全部こなす業務だった。
そして3年前、前の会社に転職して
叱られ、どやされ、一通りの失敗をして、接客についてみっちり学ぶ場を与えてもらった。

そして今。
そのその最初に働いた6年前のうろ覚えの知識が役に立っている。
そういえばビールのサーバーってこうやって分解して洗うんだった。
そうそう、コーヒーメーカーってこんな仕組み。
知りませんとしらばっくれていてここへ来て最初から教わったのだが
実はそれらはずっとずっと昔にやった事がある。
知りませんというより忘れていました、と言う方が語弊はない。
そういえば昔もこうやってビールケース運んだっけ。
今右ひざと腰があまりいい状態でないのはその頃の後遺症。
前の会社では料飲サービスは全く関わらなかった。
3年のブランクがあり、更に歳もとった。
だから今になって生ビールのタンクやビールケースなど
重い物をえっちらおっちら運んだりする毎日のせいで
腰の調子がかんばしくなく右足の指先がずっと痺れている。
腰が前みたいに痛くなって思い出した。
そういえば昔もこんなことしてたっけ、と。

やっている事は6年前にいた会社と変わらない。
そして求められるものは3年働いた前の会社と同じレベルの接客。
私の今まで進んできた道は確実に繋がっている。
なんとなくそう感じる。

新しいステージにいる私。
覚える事がありすぎて、正直必死だ。
今日で入社して10日が経った。
それでも研修する間もないまま何となくもうオペレーションに組み込まれ始めている。
不安だし失敗も多い。本当はもう少し研修する時間が欲しい。
だが人が足りない上にもう繁忙期を迎える以上やむを得ない。
私の性格と私の不器用さ加減から言えば階段を一段抜かしでポンポン進めるタイプではない。
それでも一段一段階段を上がっていくしかない。
前の会社は今いるホテルといわば『ライバル会社』で周りの関心も高い。
あそこにいたんだから、多分オペレーションに突然組み込んだってやれるはずだと
変な確信をもたれているのも最近になって分かった。
いやいや、そんな事はない。私はそんなスーパーマンじゃない。
むしろ人よりも不器用だし(なんせ未だに蝶結びがまともに出来ないんだから)
ケアレスミスも多い。
だから多分新しい私になるためには、
前の会社、その前の会社にいた時にやらかしてきたように
一通り失敗する道を通って前に進むことになる。
意地を張っても仕方がないので、とにかく出来るだけマイペースでマイペースで…。
やたらと言い聞かせる自分。
とにかく早く仕事を覚えなくちゃ。
せっかくステップアップのため、と新しい知らない土地に乗り込んだんだ。
一歩一歩、歩みは遅くとも前に進むしかない。