グラスに注げない!

今日はベルと夕食のサービス。

コミドランで…と言われていたのにいつの間にか別の仕事についていてシェフドランがいない。
団体客が多かったためレストランは空いている。
急遽繰り上がりシェフドラン。担当テーブルはさほど多くもない。
とはいえ、料飲経験のない私、やっと生ビールはまともな物を提供出来たけど
ワインやシャンパンをグラスに注げない。開けられない…。
頼まれたらどうしよう。
どうしようと思っていると頼まれるものだ。
今日は自分の担当テーブルでグラスワイン、グラスシャンパン、ボトルワイン…。
出来ない事ばっかりじゃん。

シャンパンを頼まれた時に私には出来ません、と答えた。
出来ないじゃなくてやれ、と言われる。
経験が少ないから出来ないんじゃない。
どうやってボトルを持てばいいのかすらよく分からないのだ。
やり方を知った上であればおぼつかない手つきでも努力する事は必要。
なんせ数日前にたまたまシャンパンのボトルを厨房で開けさせてもらった所
ガスがうまく抜けなくて、ウェディングのシャンパンオープンばりに
ポンッといい音を立てた挙句に更にコルクをあらぬ方向にすっ飛ばしたぐらいだ。
そんな状態で経験もない、やり方も分からない…そんなサービス、サービスじゃない。
ゲストから当然お金はいただけない。
急遽別の担当の人に飲み物の提供を代わってもらうことにする。

私自身それは屈辱的な決断。
今日はちょうどテタンジェ(シャンパンの銘柄、前のホテルに入りたての頃は
テタンジェのラベルを見て勝手にタイッティンガーと読んでた笑)のボトルが空いた。
空いた瓶に『持ち帰るので捨てないで下さい』とこっそり張り紙をペタッ。
後で練習するためだ。
仕事が終わりに近づいた頃、持ち方を教わり空き瓶に水を入れて注いでみた。
どどどどどっとありえないほど勢いよく出る水。ぎこちない持ち方に震える手。
グラスに注ぎすぎて更にあふれてこぼした。シャンパンの『もっきり』か?
…あぁよかった、無理にサービスしなくて。
そういえば何故か家に大昔に買って眠ったままのシャンパングラスがあった。
帰ってから空き瓶に水を満たしてひたすら注ぐ練習。
明日は自分で出来るだろうか。
そんな事する必要ないよ、簡単だから、と笑ったみんな。
だけど私はどうしようもなく不器用だ。
人が1度で覚えて出来る事が私には出来ない。
出来ないなら回数をこなして体に刷り込むしかない。
家で闇練である。
笑われたっていい。ゲストに迷惑をかけるよりはずっとまし。

後でワインが空いたらコルクを閉めてワインの抜栓の練習もしようと思っている。
これまた笑われたけど。(だってソムリエナイフの使い方すら知らないんだからしょうがない)
試練の日々は続く…。