こそっとセット

急に忙しくなり、どっと疲れた1日。

ルームサービスでお待たせしてしまい
部屋に飲みたかった芋焼酎を届けられないまま夕食の時間を迎えてしまったお客様。
しかもインフォメーションミスがあったらしく
小さなボトルがある、とゲストは思っており
先ほど飲めなかったものをレストランの席でそれを飲みたい、と。
残念ながら芋焼酎は一升瓶しか置いていないので、ボトルでの提供はしていない。
あるのは別の種類の焼酎だけ。
しかも芋でも麦でもない、粕取り焼酎という
日本酒の酒造会社が吟醸酒酒粕を蒸留して作ったという変り種のもの。
丁重にお詫びして、その別の種類の焼酎をボトルで提供。

口に合わなかったらもうどうしようもない。
とりあえず、その変り種焼酎の魅力、その酒造会社の特徴、
知っている限りのうんちくを並べて、満面の笑みで提供。・・・するしかない。

反応は意外に悪くなかった。
あまりお話をするタイプの方でもなかったのだけれど、お料理も楽しんでいただけている様子。
ああよかった。ほっと胸をなでおろす。

飲みきれなかったボトルを部屋に持ち帰りたい、と仰るので
後でお届けにあがる事を一言告げてお部屋にお戻り頂いた後、
本来であれば有料なのだが氷や水のセットと、夜食用のオニギリをこそっと作って
更に本来であれば他のルームサービス担当のスタッフに頼む所、
他のスタッフに一時担当エリアを任せて、私が直接部屋にこそっとお持ちすることにした。
せっかくその場で見繕って作った、この名付けて『こそっとセット』、
料金を頂いては元も子もないからだ。

聞けばチェックインの際のご案内にも小さなミスがあった様子。
足りなかったご案内や滞在に必要な手配を全て済ませて
奥様と少しお話してから退室。

こうして私が帰宅して1日を振り返る今、
そのお客様がお部屋でお夜食を召し上がりながら、
普段は飲まない種類の焼酎を楽しんで頂けているといいのだが・・・。