大事に至らず

何事もない夜勤のはずだったのだが朝方、電話が鳴った。
こんな時間の電話はとんでもない時間のルームサービスか、
はたまた何がしかのトラブルかのどちらか。
・・・あーあ。鳴ってしまった。
内心小さなため息をつき、一呼吸置いて何事もなかったかのように受話器を取る。

糖尿病の持病があるお客様からの電話。
低血糖になってしまい大急ぎでチョコレートが欲しいんだけど、という要望。
多分この方、早急に糖分を取らないと意識も失う大事になってしまう。
こりゃ大変。だが残念ながらチョコレートはない。
この土地では夜はどの店も、コンビニすら営業していない。
コンビニが開くにはあと30分以上ある。
どうしよう・・・。私のポケットにキットカットがあるけど食べかけだし・・・。
とりあえず一度整理しようと一度電話を切らせてもらい、糖分が取れそうな物で思い当たるものを探す。
あった!あった!いいものが!
それは・・・金平糖
ゲストがセルフでいつでも食べられるように提供しているお菓子の中にそれはある。
金平糖ならお砂糖を固めたお菓子で糖分補給にはうってつけだ。
(実は夜接客して体力を使い果たしたフラフラになったときたまに失敬したこともあったっけ・・・)
慌てて事務所を飛び出して、袋からザラザラと豪快に小さな袋に移し、部屋まで走る。
もし万が一金平糖で駄目だったら、私がコンビニの開店を待って、
チョコレートを買ってきて必ず届けるから、と約束して退室。
その後、ルームサービスで軽食と、更に朝食のルームサービスの予約の連絡もあったので
どうやら大丈夫だった様子。大事に至らずああよかった。

夜勤明け、ほんの少し残業してチェックアウトの大波がやってくる前にそそくさと退散。
賞味期限間近でゲストに出せない地ビール発泡酒価格で箱買いして帰宅。
午前中から風呂上りのビール。
なんかいけないことをしている気分だけど、ちゃんと仕事帰りである。
ささやかな幸せを満喫。