赤い線と黒い線を箱に繋ぐ

今朝方出発のお客様。
駐車場まで送迎車でお送りして、出発の車を見送ろうとしたのだが
一向にエンジンがかかる様子がない。
キーを回すそぶりはしているようなんだけど車はうんともすんとも・・・。
バッテリーが上がっていたようだ。

ケーブルを事務所から持って来るとお話したら、その方、ご自身でお持ちだった。
送迎車をお客様の車の真向かいに駐車してボンネットを開ける。
ブースターケーブルをお借りしてバッテリーの赤い部分と黒い部分とに繋いでエンジン始動。
何事もなかったかのように軽快な走りで御帰りになった。

そういえば私が前に乗っていた車もよくバッテリーが上がる車だった。
(というかライトつけっ放しでエンジンを切り出かけてしまう、自分の不注意なんだけど)
免許を取って初めて遠出のドライブに出かけた日、
姉の所から帰る途中に山梨の昇仙峡という渓谷に立ち寄った。
そこがどういう所なのかも当時知らなかったのだけれど、
仙人が昇る、という字に魅かれて山の中にぐんぐん迷い込んだのだった。
トンネルをいくつか抜けて九十九折のカーブを抜けて
到着したその目の前の雄大な景色に舞い上がって嬉しくなってしまい、
トンネル通過でスモールライトを付けていた事なんてすっかり忘れて
いそいそと出かけた数時間後、戻ってみたらエンジンがかからない・・・と。
父に言われてトランクに載せてあった赤と黒の先端に金属のハサミが付いたケーブル。
使い方なんてよく解らないけれど多分ボンネットを開けた中に入っている、
バッテリーとかいう四角い箱の同じ色の部分に挟んだらいいということは何となく分かっていて、
見知らぬ人の車をヒッチハイクの如くとめ、そして繋ぐ順番も分からないし
何だかバチッと火花が散ったような気もしたがとりあえず
どうにかこうにか自分のエンジンを始動させて帰ってきた記憶がよみがえった。
若い小娘が両手にケーブルを持ち、あなたの車貸して下さい、という姿は多分異様だったろうなぁ。

その頃の無謀な経験のおかげで、こうしてたまには役にたつこともある。
夜勤明けのぼんやりした頭で、なんだかそんな昔の記憶を思い出して苦笑い。

そんなこんなでボンネットを開けたり閉めたりしたせいで手は真っ黒。
その手で顔をこすったものだから、子供みたいに顔がすすけて黒くなっていた。
ちなみに気づいたのは家に帰って鏡を見てからなのだが。
その後カウンターで別のチェックアウトを数件こなしたり問い合わせを受けたりしたのだけれど
その汚れた顔のままですました顔をしていてもちっともさまにならない。
それにしてもこの油を含んだすすってどうしてこうも落ちないんだろう・・・。
今日も明日も休みなので、別にいいんだけど。