オジサンの心遣い

夜勤専門のオジサンがいるのだけれど、
昨晩、休憩で食事をとろうとしたら、
そのオジサンが私に塩オムスビ作ってあげる!と急に言い出した。
本当はご飯、持参していたのでいらないのだけれど、
断る前にもう厨房の奥へと消えていってしまい私の声は届かない。
なによりもあまりの足取りの軽やかさに断れなかったのだ。

若い者たちに作ってあげてね、昔はよく喜ばれたものだよ、と
奥からニコニコしながら戻ってきたオジサンの手には大きな真っ白のオムスビ。
塩をね、たっぷりかけるのがポイント、と言いながら、雪のように塩を振りかけていく。
そして出来上がり!召し上がれ!と満面の笑み。
柔らかく握られたオムスビは特大サイズだけれど、
米粒と米粒の間にしっかり空気が含まれていて口に運ぶとほろほろと解ける優しいオムスビだった。

ところが…塩気が強めなものが好きな私でも唇がジリジリしびれるぐらいにしょっぱい…。
しょっぱいけれど、美味しい?とニッコリのオジサンを前にして、
それがしょっぱくて食べられないなんて言えない。
ありがとう美味しい、と言いながら、そっとお茶をがぶ飲み。

そういえば、休憩の前に来月の休みが予告なしに大幅に変更された事を愚痴ってしょげていた私。
気まぐれで私のために作ってくれたびっくりするぐらい塩辛いそのオムスビは
なんとなく優しい味がするような気がして、
そのオジサンのさりげない心遣いがとても嬉しかった。