雪解けには少し早いが

なにやら言葉に出来ないような感情が満ちては引きを繰り返して
お陰でどうにも空白の数日間。

それでも一応私は元気だ。
今は実家にもう何度目かの帰省中。
行き来を繰り返す生活を始めてもう数ヶ月経つせいで、
荷物も適度に両方の家に等分されている。
だから帰省、という言い方よりもほぼ2つの家があるという感じだ。
ただ軽井沢の家は帰った後で、住めるようにするための解凍作業が必要だけれど。
次の引越し先が決まるまで、こんな生活も悪くない。

たまにある眠れない夜。
寝入りばなに知人とのメールで重い話をやりとりしていたせいもある。
どうにもこうにも、いてもたってもいられなくなり、
もう寝ようと一度は布団に入ったというのに、
そのまま上着だけ羽織って夜更けに衝動的に車に乗って家を飛び出した。

家を飛び出したからって行く宛がある訳じゃない。
しかも夜中の3時だ。
特に着替えた訳でもないので、明らかに寝巻き姿だし、
足元は『チタン消臭』、とか書いてあるごついツッカケサンダル。
こんなんじゃコンビニにも寄れやしない。
幾つになっても何やってんだ私、という行動をたまに取り、
後から自分の取った理解不能な行動に苦笑いする。

明らかにこれからドライブに遠出するという時間でもないしそんな気力もない。
とりあえず、真っ暗な中で光々としていたうらぶれた自動販売機で
温かいを通り越して持てないほど熱いミルクティーを買ってひとまず路肩に車を止める。
さてと、どうしようかな、と思いつつ何もないだだっぴろい空を見上げたらぽっかり光るお月様。
外はマイナス5度。
熱すぎたミルクティーはみるみる温度を奪われて、ぬるくなる。
両手で缶を抱えて月を見上げていたら、何故だか涙が出た。
あれ?と思ったものの止まらない。

気付いたら夜中の3時に煌々と光る月夜の極寒の田んぼのど真ん中で、
子どもみたいにおいおいわんわん泣いていた私。
でも全然なぜか悲しくない。不思議だ。
どうせ誰も来ないような場所だし、どこへ行く訳でもないしまぁいいや。
なぜ泣いているのかすらの意味を失いながら、意味など考えなくてもいいか、と
まるで雪解け水のような涙。
・・・でも多分実態はそんなキレイなものでもない。
ダウンジャケットに頭はマフラーでグルグル巻き、
足元はつっかけサンダルの鼻水を垂らした30女だということは揺るがない事実なので
おそらくこんな姿を誤って目撃された日には都市伝説になりかねない。

テレビでは都心で雪が降るかもなんて話をしていて、春にはまだ少し先だけれど
私の中で早く春が来たらいいな。