ヤドカリとプレーリードッグ

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この子は今年8歳になる。
何を飼っているのか問われると『ケモノ』と答えていた
この子の本当の種類は北米の草原に住むというプレーリードッグ
今では数年前に輸入禁止になりもう日本中どこを探しても
多分ほとんど手に入らず、数十万なんていうとんでもない金額で取引される
希少種になってしまった。

あちこち飼い主の私の都合で転々とさせられ、そして落ち着いた実家のリビング。
この土地があまりにも寒すぎるという理由で彼女は預けられた訳だが、
私が引越しすることになってもやはりこのまま実家暮らしを続けることになった。

最初は変なケモノを連れてきて、と疎ましがっていた両親だけど、
今では大事な家族の一員になったようで、
酔いどれの父の話し相手にもなり、
母にはしっかりと芸を仕込まれ(そもそも芸を覚える種ではないのだが・・・)
母のお風呂友達にもらってきたセーターを3枚もしっかり被って
この最も寒い時期に誤って毛が抜け変わってしまうぐらいにぬくぬくと暮らしている。

目つきはものすごく悪い。
そしてどうもやさぐれ感が漂う丸々と太った風貌。
本当は背中にジッパーが付いていて、
小さいオッサンが中に入ってるんじゃないかというような動き。
寝ているときは大の字仰向けで派手にいびきをかくし
構って欲しければ重いからだをゆすってケージを登ってアピール。
大好きなオヤツが欲しければ、頂戴、と覚えた芸を披露。
太ってしまって自分では届かない背中の毛づくろいをして欲しければ
素直に頭を低くもたげるし、
遊んで欲しかったのに、途中で遊ぶのを辞めれば、
声を上げて怒り狂いそっぽを向いてしまう。

喜怒哀楽をはっきり表すそれでも憎めないヤツだ。
プレーリードッグで8歳といえば、もうかなりの老齢。
ヤドカリから脱して安住の地を得た彼女は今多分幸せに違いない。

彼女の主、そう、私の安住の地は・・・どこにあるんだろう。
ヤドカリなりに、その土地で素敵な人たちと出逢い、
そして大好きな場所が増えていく。
そう考えたらヤドカリも悪くないか。