過程

軽井沢の新規オープンのホテルとウェディング施設の偵察にいってきた。

ホテルは、来月オープンを控えて急ピッチに工事を進めていた。
うちのホテルのコンセプトと酷似しており建物も雰囲気も作りも驚く程そっくり。
そういえば、そのホテルが建つ計画の2年以上前、
スタッフが視察に来たり泊まりに来たりしていたっけ。
ちなみに冬頃私が本気で転職を考えて書類を揃えていた所だ。
結果的に書類を揃えて送ろうとしたら応募終了してしまい応募すら出来なかったんだけど。
うちのホテルは2年前、他にないものを打ち出した。
デザイナーズ旅館のカテゴリを作ったといっても過言ではない。
ブームはやがて周りに真似される運命。なんだか複雑だ。

そのホテルはうちの規模よりも大きな所でスタッフの教育はしっかりマニュアル化されている。
企業理念もしっかりしてる。
だけど、マニュアル化された接客は、勝手な事を平気で言い出すゲストに
どれだけ対応出来るんだろうか。
ハードが良ければゲストは来る。
だけどホテルの利益を支えているのはリピーターの存在。
リピーターを作るにはソフト面でどれだけケアできるかにかかっている。
オープンして半年後、1年後にどうなっているんだろう。
結果的にはそこへの応募は思いとどまって良かったのかもしれない。

一緒に行った姉御の上司が支配人をつとめるホテルでランチした。
親しげに笑うその人はどっしりとして柔和な笑みを浮かべたおじいちゃんだった。
だけどその目の奥の光はただ者じゃない。
食事に同席してくれた支配人と食事しながらいろんな話をした。
姉御とその支配人の想い出話や今の自分が勤めるホテルの現状。自分が目指してること。
私が今まで出会った事のないタイプの人で、
1話をしただけでその後ろにある9を察して答えをくれるような人だった。
こんな人が上司だったらどれだけ仕事がやりやすいだろう。
ホテルは決して新しい所ではないけれど、全てが考え尽くされていて導線は完璧。
規模も小さいし部屋も広くはないけど、掃除は行き届いている。
そしてスタッフの気取らない笑顔。
こんな人の下で働けたらどれだけ幸せだろう。
今すぐに今のホテルを辞めてしまう訳にはいかない。
今私が抱えている仕事を軌道に乗せなければ、志半ばで投げ出す事になる。
少なくとも今の山場は越えなければ。

仕事を軌道に乗せて、次のステップに進む時、その人は私を迎えてくれるだろうか。
今の仕事ははっきり言ってやりたい事ではない。
ここ数日正直言って投げ出したい気持ちで一杯だった。
だけど目の光を失ってはいけない。
今の自分の仕事は次に進む過程できっと必要なことだと思うから。