身元を隠して視察

ウェディングプロデュース会社が建てた施設をみにいった。
同業での視察だと言うと、料金を取られるとのことだったので
一般のこれから結婚する新婦のフリをすることにした。
演技設定は親の言われるまま、気に入らない会場で数年前に結婚式を姉と
姉の結婚式を見ていて、自分の時には小規模な手作り感あふれるハウスウェディングを!と夢見る妹の私。
実際は私とうちのホテルのやり手のウェディングプランナーだ。

事前に資料請求をして打合せのアポを取る。
そして迎えた当日・・・。

オープンしているというのに、まだ工事が終わっていない。
市松模様の床の木材がすきまだらけでガタガタする。
ガラス張りが売りのはずなのに、ガラスはほこりだらけ。
天井がガラスなのだが、雪の重みに耐えられるのか疑問。
全面ガラスにブラインドをあえてつけていないというが
温室のように死ぬほど暑い。
池に水をたたえて、水とガラスと石と木のハーモニーになるはずのコンセプトなのに池の水はよどんでコケがはっている。
突込みどころ満載である。
導線も考えられてないつくりなので
規模の大きいゲストが入ると多分ごったがえして館内は人で一杯になる。
ここまでハードがめちゃくちゃだとソフトでカバー出来る範囲の問題ではない。

見学しながらなんだかいたたまれない気分になってきた。
地獄絵図が目にうかぶ。
成約したゲストも悲惨。クレーム処理に走るスタッフも悲惨・・・
結婚式は普通1度しかない。失敗したら取り返しがつかない。
ホテルよりも難しい。次のチャンスはないのだから。

ちなみに私の嘘結婚式の要望は、親戚や友達を呼んだ小規模なもので親戚には音楽家が多数いるため、是非生演奏で弦楽四重奏を入れたい、というのが外せないもの。

弦楽四重奏なんて普通の所では入れないのか目を丸くされたが
うちのホテルで結婚式を挙げるゲストは最近バイオリンやチェロを入れる事が多い。
実際、弦楽器での結婚行進曲なんて結構鳥肌ものだ。
しかもちょうど生演奏を入れている結婚式を見学に来たカップルは
10中8,9自分の式でも生演奏をオーダーする。
客が客を呼ぶ構図に似てる。

話がそれた。
話をしていたらうちのお金持ちゲストの婚礼みたいになってきて
ウェディングプランナーの目つきがギラギラしはじめた。
いい金づるを手に入れたといったところだろうか。
もっともそこまで言いたいだけ言って、
結局実際は相手すらいないとかいうそんなお粗末な話。とほほ。
嘘ついて御免なさい。

ちなみに得た情報は各同業者や近隣のホテルに流される事になる。
こわやこわや・・・