なんにも気乗りしない夜に

どうにも何も気乗りがしない日ってある。
近い日に予定していたものが立て続けに2件キャンセルになり、
更に気分を変えようと泳ぐ気満々で赴いたプールもお休み。
別に前々からすごく楽しみにしていた用事という訳でもない。
プールだって明日は営業している。

でも糸がぷっつり切れたというか何となく何もかもが面倒になってしまい、
明日自分で予定していた友人との会う約束までキャンセル。
なんだろう。この理由もなく憂鬱な感じ。
おかしいな。

こんなときほど自堕落になっちゃいけない。
だって余計に滅入るもの。
部屋を隅々まで掃除して、
やろうやろうと思っていて散らばったままだった書類もきれいにファイリングして。
そして、丁寧におつまみを何品か作ってビールを1本だけ飲むことにした。
その時間を大事に過ごすために環境を整えて、
その時間を大事に過ごすためにおつまみを作る。
作ったのは豚キムチ炒めと新たまねぎのスライスに柚子こしょうの手作りドレッシングを和えたもの、
そしてしいたけのマヨネーズ焼き。
おつまみを美味しく食べるためのお酒。
それは飲むためでも酔うためでもなく、あくまで脇役だ。

ゆっくり味わって食べながら、かもめ食堂を見た。
それにしてもこの映画に出てくるお料理のおいしそうなこと、おいしそうなこと。
淡々と過ぎていく中におにぎりだったりしょうが焼き、卵焼き、肉じゃが、
それらを大切に作り、そして大切に食べている感じがする。
なんてことのない食堂の日常。
時間を大事に過ごすために自分で作ったおつまみを食べながら、
ああ、せかせか予定を詰め込んだりあれこれ思案しない時間も大事だなって。
もともとの今の生活自体、そんなに予定がみっちり詰まった生活でもないのだが。

以前の私は、こんな気分のとき、いつも、びゅーんと車ですっ飛ばしてどこかに出かけていた。
それは山だったり海だったり。
独りで車の中で過ごす時間も、暗い山道をひゅんひゅん走るのが好きだった。
今でも放浪癖はたいして変わらないけど、
何となく何かを探しに行かなくちゃって気分だったりして、切羽詰った気分だったように思う。
探していたのはなんだったんだろう。
置かれた現状を打破した自分?
殻を打ち破ったら、何かが得られるような気がしていたのかもしれない。

現状を打破しようと思って闇雲に動いたり、がむしゃらにやるのも一理あるし
そうすることが必要なことやそれが必要な時期も勿論あるけれど、
現状を受け入れて冷静に見つめなおす事もそれと同じぐらいに大切。

憂鬱なら憂鬱と対峙する・・・つもりだったが
食べたかったものや、わざわざ自分だけのために丁寧に盛り付けた料理を食べるうちに、
実際に対峙していたのは目の前にあるお料理であって、
憂鬱やら面倒だと思う重い気分やら、
そんな抽象的なものじゃなかった事に、はたと気がついた。

要するに作って食べてるうちに忘れちゃったみたい。
案外単純な私。
料理やお酒を美味しいと思える時間ってホント大事だ。