もうひとつのホテルを夢見て

もうひとつのホテル。
・・・そこはまだお化け屋敷のままだ。
その工事が始まるのを心待ちにしながら、毎日前を通って出勤している。
まだ設計図の段階。
建築家さんに頂いたデザイン画を額に入れて家に飾り、毎日楽しみに眺めていたりして。
こんなエントランスで、こんなレストランで。
ひとつひとつ、あれこれ変わっていく図面を見せてもらいながら、
こんな発想があるのか、こんな色使いがあるのか、と感心することしきり。
ちょうど昨日その設計デザイナーさんがいらしていて、
出来たての分厚い図面を見せてもらい、頭の中でその建物を想像してみてにんまり。
毎日お化け屋敷の敷地を見ているから、なおさら想像は膨らむ。

本当は今まさに一つ目のオープンを控えて、実際はそれどころではないのだけれど
そのホテルで働くのに待つ、将来の仲間達もあちこちにいる。
沢山の問題を抱えて、工事が始まるのはまだもう少し先になるけれど、
そこを実現させるためには、今のホテルをきちんと軌道に乗せなくちゃいけない。
写真だって、大好きな写真家さんにお願いしたいし
なによりこだわりぬいて作っている設計図が、現実の建物になることを
本当に心から楽しみにしている。

今のホテルもみんなでゼロから作ってきた。
自分が手配したもの、あれこれ予算で頭を悩ませながらみんなで手配した備品たちが
ぞくぞくと届いて、ダンボールの山と戦い、そしてあるべき位置に実際に並んでみて、
頭の痛い問題が山積している事に思い悩むよりも、
ひとつひとつが形になっていくことが今は楽しみで楽しみで仕方ない。
自分たちの手で作り上げていくことが、こんなにも自分の自信に繋がるとは、思ってもみなかった。
だから、もう帰れば?と言われるまで仕事をしていても全く苦ではない。
追われて仕事をしている訳でもない。
だって、楽しみなんだもん。帰るのが惜しくて仕方がない。
公園で暗くなるまで遊び、その場から離れるのが惜しいと思いながら家に帰る子供みたいだ。
そこはあくまで職場だけれど、私にとっては大事な大好きな場所だから。
そんな大好きな場所で、大好きな仲間たちと仕事が出来る事って、
本当に、本当に幸せなことだと思う。

病気になって働けなくなって、そんな時に今の上司に声をかけてもらったのが去年の秋。
それから本当にいろいろな事があって、今ここにいる。
上司に友達同然の口調で話し、いっつも私は暴言ばかり吐いているし、
普段は大概アニメや映画の話しかしてないけど、実は心から感謝している。
ここにこうして私がいられて、そして大事な仲間たちと出逢えたのは、その上司のお陰だから。

もうひとつのホテルが形になるのは、まだまだ先。
どうか皆の夢や願いが叶いますように。
私に出来ることは、一歩一歩、前進しようと歩みを進めること。

決意を新たに、そして夢に心を躍らせる生暖かい風が吹き荒れる嵐の夜。