せっかち過ぎる

渋滞真っ只中の首都高速

そびえたつ森ビルを見上げて、
真っ赤なこれから進むべき渋滞案内表示を見ながら小さなため息をひとつ。

高速を降りて迂回すべきか否か…
でも降りた先の道がスイスイかといえばそうでもない。

気長に帰ることにしよう。

私はひどくせっかちだ。
まるでネズミみたい。
子どもの頃はよくチョロチョロしてるって言われたっけ。

父もせっかちだし亡くなった祖母も恐ろしくせっかちだった。

何でも結論を急ぎ過ぎる。
だけど、すぐには出ない結論もある。
すぐには育たないものもある。

果実酒は時間をかけてこそ
まろみのあるいい味になっていくし
小さな木の芽は年月をかけて大樹へと成長していく。
考えてみれば今の私だってそうだ。
30年とちょっとという時間をかけて今の自分になった訳で
子どもの頃早く大人になりたいと思って毎晩眠りについていたのが
まかり間違えて現実になっていたら
今の私は当然いない。

時間と共に育っていくものもある。
ホテルだってそう。
人間関係だってそう。

私のこのせっかちな性格も、
時間をかけたら
もう少しゆったりと構えられるようになるんだろうか。

東京でも車の音と雑踏にまぎれて
かすかに虫の声が聞こえる。
この季節で一生を終える虫たちは
せっかちに、でも精一杯鳴き続ける。

ひとときひとときを大事に
後悔しないために、
今をきちんと生きるために、
そう思い過ぎるあまりに
私はいろんな事を急ぎすぎてはいないだろうか。
あんまり急ぎ過ぎて大事な事を忘れたり

その物事や相手に合ったペースを
無視したりしてはいないだろうか。
今を大切にするのは当然だけど
あんまり瞬間にこだわりすぎて
先を見据えるのを疎かにしてはいないだろうか。
渋滞にはまりながらそんな事をひとり考える夜。