深夜の一人ダイハードごっこ

疲れてるからそんな事になるんだろうが。
有り得ない事が起きた蒸し暑い夜。

朝が早い現場スタッフに鍵を預けて帰宅…しようとしたら。

…あれ
…あれれ
…あれれれれ
車の鍵がない!!

事務所は既に施錠してしまい、そのスタッフの寮のポストに入れてしまった。

また鍵をもらえばいいのだが、電話にでてくれず…
(夜中の2時だもの、仕方ないよね)

どうしよう。でも帰りたい。

そんな時の私は無駄な行動力を発揮する。
思い立って階段の手摺りによじ登り、
更には排水パイプをよじ登り、
建物の隙間を伝って手すりを乗り越えて、事務所のベランダに侵入。
窓の施錠を忘れていたらそこから入れると思ったのだ。
夜中の2時に壁に張り付き真っ暗なベランダで窓の鍵を確認。
あっちもダメ、こっちも開いてない…。
こんな時ほど施錠忘れなんてない。

…でも、深夜2時に明かりの消えた真っ暗な建物の外の壁に張り付き、
侵入経路を捜している姿って、
ど、どろぼうか!?私!?

目撃されたら通報される事間違いなしの状況。

やましい事なんて何もない、ただ忘れ物をしただけなのに
いったい私は何やってるんだろう。

そもそも落ちたらケガ間違いなしの場所。
(ちなみに下は川である)

ふと我に帰り、自分のしている事の無意味で危険な事に気づいた。

また、すごすごと壁を伝って排水管を下り、階段の手摺りから振り出しに戻る。

あ。
現場の事務所まで行けばスペアキーがあるかもしれない。
(最初に気付かない私もどうかと思う。)

てくてく歩いて、夜勤に事情を話し、
事務所中捜してマスターキーを見つけて借用。
そんな苦労の末事務所にやっと入ったのに…鍵はなかった。

かばんにもない。
事務所にもない。
どうしよう。泣きたい。

日暮れて、道遠し。
(ってまもなく夜が明ける)

とりあえず私が仕事中フラフラした場所をみんな見て歩いてもない。
建物の階段、駐車場、喫煙所…
ない、ない、なーい!

うなだれて、トイレに行ったら。
あ。あった…。
灯台下暗し。
今までの苦労っていったい!?
気付けば汗だく、ドロドロ。髪の毛なんて振り乱れている。
そりゃそうだ。
建物をよじ登ったのだから。

そんなこんなで一人大騒動、呆気なく終了。

深夜の一人ダイハードごっこ…。
まもなくひとつ歳をとる、とある日の32歳の夜。

今月はとんでもない残業続きで、
平均しても14時間近くの仕事。

1日が24時間でよかった…そうでなければきっともっと働いてるはずだ。

今日も戦争は続く。