部屋探し秘話

実は私、引っ越しするのは今回でなんと10度目である。
転職毎に各地に引っ越ししてきたからなのだが、思わず指折り数えてみてびっくり。
そんな数になるとは思わなんだ。
 
引っ越しをするには、ネット等で気に入った間取りや立地、部屋に目星をつけて不動産屋に赴く訳だが
内見してみると、そのイメージとまるで違ったりする事も多い。
あれ?日当たりゼロ…。わわっ!鼻が曲がる程のカビ臭!ぎしぎしするし!隣のマンションから丸見えだし!
そんなのは意外と当たり前。
決めるにあたって、ある程度の賃料相場だけの予算を持っていれば、
さしてそんな物件が出てくる事もないのだと思うけれど、
今回私が探した物件というのは相場の半額近い物件。
つまり、「訳あって値段を下げた」「築年数が相当古い」というのがごっそり出てきた訳だ。
中には、私が現在住んでいる実家よりも築年数が古い物件もあった。
田舎では、比較的新しく建てられたアパートが多いので、
そんな古い物件がまだ生きている事自体信じられない。
これは東京という土地柄なんだと思う。
 
また、「告知事項」といって、いわゆる前住人に何かあった(つまり亡くなった)とか、
その他諸々、共用部分で殺人事件が起きたとか屋上から飛び降りたりしたとか…
賃貸物件だもの前住人にもしもの事があるというのは確かにありうる。
そうして住むに当たって、必ず不動産屋が新住人に伝えなければいけない事項がある部屋というのも
実際には存在している。
告知事項あり物件は、明らかに何かあった物件なので事前に回避するにしろ
告知する必要はないまでも、実際はある意味で訳ありである事も多々ある。
そんな中での群を抜いたトンデモ物件の話。
 
◆空室なのにだれかがなぜか住んでいる!
これは今回ではなく箱根時代での話だが、
部屋を内見させてもらいに鍵を開けてみると、玄関口にスリッパが…。
それはもう、おでかけするのに、「いってきます」の脱いだ形でおいてあるのだ。
内見するときにスリッパを用意してくれる業者も多いので、もしかしてそれかな?と思ったのだけれど
入ってみてびっくり。何故か飲みかけのお茶がテーブルにある。
そして作り付けのベッドも「おはよう」と今起きたかのように掛け布団がぺろりとはがれた状態。
私は清掃前のまさかの訳あり物件かと思い、青ざめたのだけれど
実は、管理人が勝手に空き部屋に住み着いていたという顛末。
人の息吹を感じる部屋を内見させられてそこに住むかって?
住むわけがない。
 
◆大家さんが自由に出入りする!
これは東京の物件の話。
1Kマンションで、地域相場から考えたらものすごい安い賃料に飛びついてみたのだけれど、
実は告知事項がありまして…と口をもごもご。
何ですか?と問うたら、隣の部屋(隣人の部屋ではない、隣接する部屋のことである)が
大家さんの荷物置き場でして、物理的にお客様が借りる部屋を通らないとその部屋には行けず、
荷物を取りたいときには大家さんが勝手にマスターキーで部屋を開けて中をとおって荷物を取りに行くという。
私が部屋に居ようが、不在だろうが関係なしに、である。
ちなみに大家さんは男性…。
つまりは本当は、その部屋は縦に長い2Kの部屋。
その手前のキッチンと1部屋だけ私が間借りするという恐ろしい物件である。
知らない人が自分の部屋に出入りするなんてありえないし考えられない。即却下だった。
 
◆夜逃げしたて風の部屋
告知事項も何もない、ふつうの部屋。
築年数が古いのはわかってたけれど、値段の割には間取りが広い。
うん。見せてもらおう。
これは不動産屋も知らなかった事だが、内見しようと行ってみたら、部屋の入口にべたりと張り紙が。
かれこれしかじかこういう訳で…。
要するに
「家賃を滞納したままいなくなったので中の荷物は撤去させていただきます、
有無は言わせませんからそのつもりで宜しく!」
という内容の事が書かれており、前住人の名前と連帯保証人の名前が書かれていた。
ルームクリーニング中という割には外に出されている荷物の多い事、多い事。
ティーちゃんの衣装ケース(中身入り)、スーパーファミコンとそのカセットたち、座椅子、テーブル…
あぁ。部屋の清掃というよりも荷物の片づけまで業者が請け負った訳だ。
 
まるでコントみたいな話だけれど、みんな本当の話。
叫びたくなるけれど、いくらなんでもそんな部屋には住みたくない