ぬっこ、倒れる

昨日は11月三度目の浅草酉の市の日。
仕事後に社長に連れて行ってもらう約束をしていた。
だが洗い物をしながらどうも様子がおかしいなぁと思ってから2時間後、
支えなしでは立っていられなくなった。
のどが痛い、悪寒がする。
 
流し台によりかかりながら、手は動かし続ける。
あと2時間程で仕事は終わる。そこまで身体を持たせたい。
…でも、意識ももうろうとしてきた。
景色がぐるんぐるん回り目の焦点が合わなくなってくる。
仕事を始めて1週間。こんな所で倒れる訳にはいかないし、
何よりも身体が言う事を聞かない事が悔しくてたまらない。
 
嫌だ。帰りたくない。
嫌だ。まだ仕事がしたい。
頑張って私の身体。
 
そう思っていたら、ぼろぼろ大粒の涙がこぼれた。
しゃくりあげながら、洗い物を続ける。どうしよう。泣き顔なんて。
それでも悔しくて悔しくてたまらない。
焦ったって身体の無理がきかなくなっているんだから、悪あがきしても仕方ないのに。
でも途中で早退なんてしたくない。
そんなジレンマに駆られて泣きながら仕事。
 
そんな中で私、このまま働けなくなるんじゃないか?って不安がよぎる。
いやいや、ただの風邪だから。
でも…このえもいわれぬブラックホールに吸い込まれるような恐怖感というのは
多分一生抜けないものなんだと思う。
必ず休み明けに立ち上がる。だからその為に、私は帰る。
そう心に決めるまで、ぼろぼろ泣きながら、熱いお湯でふやけた手に亀の子だわしを握りしめる。
 
意を決したのは化粧が崩れて鼻水まで垂らしてぐずぐずになった頃。
「すみません、社長、酉の市に行けそうにありません」
「行けないのが悲しくて泣いちゃいました」
と更に訳の分からない理由を述べる。
酉の市は来年行けばいい。また年が巡れば開催されるものなのだから。
その時までに私は成長出来ているだろうか。
 
結局定時まではなんとか踏ん張って、片づけ仕事を少し残してリタイヤ。
帰って熱を測ったら、39度あった。昼までは何の問題もなかったのに。
身体の限界ラインを超えた瞬間の崩れ方は唐突に訪れるものだ。
薬を飲んで時間が経っても熱はぐんぐん上がるばかり。
39度4分、39度7分…駄目だこりゃ。
寒い。寒い。こういう時の独り暮らし、見知らぬ土地。不安は募る。
 
長くなってしまうので、次の記事に続く。