出来ないなんて言わない

うちのお得意様がホストになり、大切なお客様を招待してのランチが入っていた。
GMが直々にケアしていた方でメニューも通常のものではなく特別なもの。
ホストであるお得意様を仮にA、ゲストであるお客様をBとしよう。

お客様のテーブルに用意されたメニュー表には『A様を囲む会』
…招待する側のホストを囲んでどうするっ!!
正しくは『B様を囲む会』である。小さなようで大きな間違い。

ランチが始まって数分経った頃、私の所に内線があった。
メニューの名前が間違っている、そちらにデータはないか?と。
ここにある訳がない。メニューはマネージャーが直々に打ったものだ。
そのマネージャーは外出しており連絡が取れない。
データが入ったノートパソコンもマネージャーと共に外出中…。
さぁどうする!

レストランはフロントにデータを探すように頼んだ。
ある訳がないが私も探す。
だがあるはずのない物を探すのなら、新たに作り直した方が速くないか?
私がいる場所はフロントやレストランから離れた場所で歩いて5分程。
もし作り直すならレストランに近いフロントで作った方が速い。
そう思って、代替案を考えてフロントに依頼したら…
ありえない、とっくの昔に諦めていた。
だってデータがないから同じものはプリント出来ない、仕方ない。

仕方ないなんて言ってられない。
うちの失敗でホストの顔に泥を塗ってフォローもなしなんてありえない。
レストランのスタッフはサービスにてんてこ舞い。
最初の失敗ですっかり慌てて、冷静に何か出来るような状態じゃない。
とにかく大至急間違えたものを直して1から打ちなおしたら
まだ間に合うはずだとフロントに言ったら今忙しいから無理、との答え。
耳を疑ってもう一度問うたが、今は忙しいから出来ない、と。
…いそがしい?!?!そんなバカな?!
しかもレストランの当日の責任者までデータがないから無理だとすっかり諦めている。

不可能なんて言葉、そう簡単に言うもんじゃない。
GMは出張でいない。レストランマネージャーも不在。
うちの大事なお客様へのミスをそんな簡単に諦めてはいけない。
そんなに出来ないと言うなら私がやる。

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プリントされた間違えたメニューのコピーを用意して慌てて作り直す。
最初にプリントされていた紙は手元にない。
だがお客様にとってみたら、どの紙だろうが関係ない。
自分の仕事を一旦全部ストップし、
周りの資料を押しのけてタイプライターの機械と化す私。
取りかかって20分―
プリントしたての温かい紙を抱えてレストランへダッシュ
無駄な手間がなく最初から打ち直しをしていればあと15分は短縮出来ただろう。
だがとにかく食事中に修正された新しいメニューは何とか届ける事が出来た。

ほら、やっぱり不可能じゃないでしょ?

ちなみにフロントスタッフが忙しくて出来ない、と
答えた理由は食事に行く為だったらしい。
自分の食事とゲストとどっちが大事なんだろうか。

とりあえず息を切らして500メートル全力疾走していい運動になった。
怠け者に腹を立てても仕方がないので、気にしない、気にしない。
食事前に運動して美味しくお昼が食べられたのは言うまでもない。