趣向の違い

私は肉も魚も好き。
そして食べることが好き。
給料の食費に充てる割合は間違いなく他の人より高い。
そんな私が、この仕事をするようになり驚いた事がある。
世の中こんなに肉が食べられない、という人がいたんだ、ということ。

うちのホテルでは召し上がれない物を伺う。
アレルギーで食べられないものは勿論、
好き嫌いであっても極力配慮するようにする。
肉の形があるものは食べられないけど、ダシを取ったものは大丈夫。
牛、豚はダメだけど鶏のささみぐらいなら食べられる。
これぐらいは当たり前。
肉が召し上がれない方はメインは魚になる。
それぐらいは料金は変えずに当日リクエストがあれば
キッチンもフレキシブルに対応してくれる。

だが、先日前代未聞の方に出会った。
肉、魚介類、乳製品、糖類、植物性のものも含む油全て、果物…。
食べられるものは生かボイルか、焼き野菜、調味料は塩コショウのみ。
炒めたり揚げたりはダメ。
味付けも砂糖が入るものは全て、みりんもダメ。
果物がダメなのでジュースもダメ。
パンも砂糖が入った物は嫌。
これでは普通のコース対応は絶対不可能で
この方専用の特別コースを用意することになる。

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ベジタリアンという趣向の方達が
こんなに世の中に大勢居る事を私は知らなかった。
何でもとりあえず口に入れてみる私からは申し訳ないが理解出来ない。
だがベジタリアンの気持ちを少しでも理解しようと、調べてみた。
その中で「肉食は熱帯雨林を消滅させ、環境に良くない、
菜食が飢餓を救い、地球温暖化を防止する」と書いてあった。
風が吹けば桶屋が儲かる、の話にも通づるような気もしたが
思想として確立しているようなので、これについては何も言わない。
いろいろ読んだがやっぱり賛同できなかった。

だが、食べる事の喜びを感じるのはエゴなのだろうか?
彼らは環境のために食べる喜びを我慢しているのだろうか?

LOHASという生き方が最近注目されているという。
LOHAS(ローハス)とはLifestyles of Health and Sustainability の
頭文字をとった略語で、「健康と地球環境」意識の高いライフスタイル
を推進すること。
これとベジタリアンが関係あるかと思って併せて調べてみたけれど
LOHASな人たちは環境に優しく、そして自分の生活も楽しみも大切にする。
ストイックにベジタリアンを追求することで、
その食の楽しみを削っているとはちょっと違うような気もする。
もっとも、そんな風に食材に制限を加える事が
その人にとってのHappyなのかもしれないけれど。

人によって趣向は様々だ。
多分私が菜食にしろと強要されたら、
それは人生の楽しみの半分を削がれた気分で非常に辛い事だと思う。
美味しいものを食べるために私は生きている。
私みたいな食べ物への執着を持ち、美味しい物にとことん貪欲な人間を
可哀想な生き方だと思う人もいるかもしれない。
だけど、そんな私から見れば、(私にとって)美味しい物を
あえて食べないベジタリアンが可哀想に思える事もある。
菜食の立場も肉食の立場も、それぞれが満たされているのだから、それでいい。

お肉も野菜も、バランスよく食べる。それが私。
趣向だからどちらが正しいという訳じゃない。
いろいろ調べて結局無難な答えに落ち着いた。

それにしても世の中いろいろな方がいるものだ。