コンシェルジュ

もともとホテルの仕事をするきっかけは非常に不純な理由だった。
というよりも理由すらなく、
ただなんとなく、ホテルに就職したという目的もへったくれもない状況だった。

コンシェルジュになりたい。
はっきりとそう思ったのはいつごろの事だろうか。

コンシェルジュという仕事は要するにお客様に対して何でも屋であること。
観光プランの案内だとかその他宿泊に関する諸々の手配を全て請け負うというのが仕事の内容。
部屋を取るだけでなく、例えばまとまった人数のお客様なら小型バスを手配することもあるし
また前泊の宿をお好みに合わせて相談にのり、別の宿を取る事だってある。
うちのフロントはそんな役割も担う立場のはずだった。
だが、実際はチェックインやアウトに忙殺され
地図を渡すのみになってしまいきちんと道案内すらしてあげられない事だってある。
予約に異動になった時、ゲストと直接接客が出来ない事を憂いだけれど、
実際に予約の電話を取るようになってみると、
電話で話す方がゲストの相談に乗ったり様々な手配をする事が多くあるような気がする。

予約が入っている件で必ず私宛に電話をしてきてくれる方がいる。
丁寧な口調で無茶な事をお願いしてくれる方なのだが、私としてみれば大歓迎である。
面倒な事(横暴とは決して違う)をおっしゃる方程またいらしてくれる方が多い。
その宿、その土地で楽しむ術はスタッフが一番知っている。
聞いてくれれば、最大限どう楽しんだらいいのか、
こちらもゲストに案内しやすいしまたそれらの良さも分かってもらえると思う。
だから、漠然とした依頼でもゲストの真意を引き出しながら
ゲストからの依頼を達成させていくのは本当に面白いし、非常にやりがいがある。
大きなホテルでは大量の予約やゲストをいかに効率よく接客するかが重要。
だが私がいるような小さな所では各々のゲストといかにしてコミュニケーションを取るかが重要。

面倒な手配ほど面白い。
面倒な手配ほど、自分のオリジナリティがいかせるし、ゲストと近い距離で話す事が出来るから。