傘張り浪人のように

ウェディングの姉御が、ちょっと手伝ってと事務所のドアを半分だけ開け
そこからひょこっと顔を出して私を呼んだ。
イレギュラーな仕事の始まり。さて、今日は何が起きたんだろうか。

披露宴の席次表やお渡しする印刷物は、
基本的に新郎新婦が原稿を作り印刷業者をうちのホテルが紹介する仕組み。
だから中間にうちが入るだけで基本的に原稿の内容と仕上がりはゲストと業者間の話。
ミスがあったとすれば、確認が漏れたゲストか、間違えて印刷した業者かどちらかが原因。

受付の時に出席者に渡す席次表の漢字が違う、という。
印刷屋から仕上がったものなので、原稿などない。
印刷も出来ない。
親族の方から修正可能なら修正してください、と
にっこり笑って依頼された姉御はご安心くださいと答えたという。
受付はまもなく始まろうというところ。

とりあえずフォントの種類とサイズを合わせて間違えた字だけ印刷しカッターでカット。
印刷物の間違えた字の上にそれを貼り付けて、カラーコピー。
原紙の上にそのコピーを貼り付けて完了。かなり地道な作業。
家内制手工業。浪人の傘張りみたいだ。

時間に追われているというのにそんな話をしながら姉御と2人でペタペタ糊付け。
結果オーライならばなんでもする。そんな姿勢が私は好きだ。