アルバイトで垣間見たイマドキの家庭事情

話はさかのぼるが週末の話。

車で1時間半の家電量販店でアルバイト。
その日がアシスタントで研修に入る最後の日。
普通携帯売りの女の子数人と監督役が1人というのが1セットなのだが
研修中の私がいる分、ちゃんとした監督役がもう1人いる。
この日一緒だったのは慣れた感じの男性。

このアルバイトだが、5回に3回ぐらいの割合で巨大な携帯の形をした気ぐるみを着なければいけない。
着るのはもちろん監督役。
週末の電気店は子供づれの家族が多い。
着ぐるみは子供の人気・・・かと思いきやそうでもない。
私は着ぐるみで視界が狭くなった彼のサポート役で一緒に店内を回るのだが
巨大な携帯を見て泣き出す子供もいれば
遠くから走ってきて体当たり、タックル、とび蹴り・・・まるでサンドバックだ。
多分そのうち私も着せられるであろう、この着ぐるみ。
加減を知らない子供たちに押し倒される日が来るんじゃなかろうか、と一抹の不安。

この着ぐるみに集まる子供たちを見て、驚いたことがある。
どなたか大人と来ているはずなのに、周りに誰一人として保護者がいない。
何人かの子供だけで店内を縦横無尽に走り回り、別のコーナーの模型を持ちあるいたり
ディスプレイされているような秋のモミジや栗を投げたり。
それらを注意する者もいない。
子供だけなので分別も付かない。まるで無法地帯である。
着ぐるみは破壊寸前で、なんとかバックヤードに戻ってもらったのだが
その後もしばらくまとわりついていた兄弟がすごく印象的だった。

両親は携帯の機種変更らしく機種選びや手続きに熱中。
着ぐるみに体当たりしていた兄弟だが、
いなくなってからは遊んで欲しいと今度はスタッフに絡み始めた。
皆かかわりたくないので嫌な顔をして逃げる。
確かにかなり乱暴だし言葉も悪い。素行も悪い。
だが、この子供たちは公共のスペースでわが物顔で騒いではいけないという事自体分かってない。
つまらない、遊んで欲しい、話を聞いて。
そんな事を言葉の端々に言うその子は、本当はさびしいんだと思った。
両親の所に戻ると追い返されるようで、また戻ってくる。
私も仕事なのでその子供と遊んでいる訳にもいかないのだがなんだかかわいそうに思えてきた。
愛情を十分に注がれていない。
明らかに、その子たちはシグナルを発している。
だが自分の子供たちから発せられるシグナルに両親は気づこうともしていない。
着ぐるみをさんざん蹴られた彼も被害者だし、また仕事を妨害された私も被害者。
だけど、一番の被害者は、愛情を渇望してやまない子供たちだろうと思う。
駄目なものは駄目と叱る。愛情を注ぐときはしっかり注ぐ。
多分放置するのが一番可哀想だ。

休憩に入っている間に両親の機種変更は終了しその子たちは帰ったのだが、
帰り間際に私を探してだだをこねたらしい。
その子たちの回りにはちゃんと目を合わせて話をして、
ちゃんと話を聞いてあげる大人はいないのだろうか。
私はその子たちともうかかわりを持つ事は多分ないだろう。
私はほんのすこしだけいまどきの家庭事情を垣間見ただけ。
でも暗澹とした気分だ。

ちなみに、その日は初めて携帯が2台売れた。
ちょっとうれしい・・・。