セクションを飛び越えて

今、パティシエが不在なのでケーキは外注である。
外注だが、配達はしてもらえないのでホテル側で取りに行く。
大抵シフトに入っていない私がその役を仰せつかっているのだが、
今日のケーキはシルバーのトレーに乗った30cm×50cmくらいの特注のもの。
自分ひとりではピックアップできないので、
ドライバーさんに運転してもらってケーキを助手席に乗せて持つ。
危なっかしい上になんともありえない光景。まさに珍道中である。

レストランの知識はないので私はギャルソンにはなれない。
だが、私でも最後の片付けは手伝える。
気が付けば宴会の片付けをしていたのはウェディング担当の人とフロントの私と
予約の人と…。
もう最近どの部署でもどうでもよくなってきた。
手が空いている人が忙しい部署を手伝えばそれでよいではないか。

うちのホテルは規模が小さい。
客室数が沢山ある所では、部署の線引きして、よその仕事には手を出さない。
下手に人の仕事に手を出せばそれは足並みを乱すし混乱を招く。
だが規模が小さい分スタッフも少ないのだから、
部署に固執することなく出来る事は助け合ったらよいと思う。

私が最近いろいろな部署にも借り出されている姿を見て、
あるスタッフが、あちこちで手伝わされて可哀想に、と言った。
手伝わされているのではない。やりたいから手伝っているのだ。
たいした客室数もない小さなホテルなのに
それは自分の部署の仕事ではないから、と
てんてこ舞いの部署があっても、率先して手助けしよう、という動きは全くない。
一方の部署では人手が余って残業時間が0時間なのに対して
もう一方の部署では人手不足で残業時間が月50時間を越える。
それなら、残業0の部署が手助けすることで
お互い25時間ずつの残業で済むように歩みよりは出来ないのだろうか。

部署の垣根なんて取り払ったらいい。
困ったら助け合う、という至極簡単な事なのに。
互いの苦労も仕事の内容も実際に関わってみれば、理解出来るだろうし
部署同士のいがみ合いだってなくなるかもしれない。
もう少し肩の力を抜いて仕事をしたらいいのに。
最近そう思う。
私はただの平社員。会社の仕組みを変えようとかそんな大きい事を言うつもりもない。
だけど、私や一部の人達が助け合おうと動く姿を見て、
賛同して手伝ってくれる人が増えるのはちょっと嬉しい。

今日は宴会の手伝いで、口に入った途端にとろける牛のステーキとフォアグラのソテー、
ショートケーキが戦利品。
ささやかな幸せ。