現金がない!

タクシーの手配は日常茶飯事。
最寄駅からは30分程。
いつも手配するタクシーは提携している会社のものなので、
定額でホテルまでお願い出来て、
しかもタクシー代の支払いも宿泊代と一緒に払う事ができるという便利なもの。

だがそのタクシーはいつもと違った。
ゲストの乗った新幹線は最寄駅には止まらないもの。
1つ手前の駅に止まり、しかも遅い時間なのでその後の新幹線はない。
当然提携の会社から車を回してもらうにも1時間以上かかる場所で遠すぎる。
仕方ないので、ゲストが降りる駅近くのタクシー会社に手配する。
どの降り口で待ってもらえばいいのかもよく分からないので
名前を書いたプレートを持ってドライバーさんに改札で待ってもらうよう
無理承知でお願いする。
田舎のタクシー会社さん、気のいいおじさんだった。
快く無理を引き受けてくれ、こちらからホテルの地図をFAXして手配完了、かと思われた。

事件はその後で起きる。

手配も終了したはずなのに、まもなく新幹線が着くという時間にゲストから電話。
…現金持ってないんですが、ホテルで払えるんですよね。
残念ながら、提携会社でないので出来ない。
しかもそのタクシー会社はカード払いを受け付けていない。
だがお客様は間違いなく一駅分手前の駅に降りる。
タクシーはもう営業所を出ている。
うちからは迎えにも行ける距離ではない。

当然ながら基本的にお客様の支払いをホテルが立て替える事はしない。
だがその場で思いつく選択肢が他にない。
イレギュラーなその手配を私が決断していいものかどうか悩んだが
確認するマネージャーも退社しており私だけ。
よかったかどうか分からないが、とりあえず後で報告することにして
翌日必ず銀行でお金を下ろしその分は現金で払ってもらう確約頂いて、
タクシー代を立て替えてあげる事を約束した。
その手配も済ませて、迎えるスタッフにも申し送り。

タクシーが着いた所で、事情を知らないレストランマネージャーが蜂合わせた。
…もめている。『経理上困りますから…』
そんな事を言われてもタクシー会社も困る。
そして何よりゲストが一番困る。
申し送りしたスタッフにその怒り狂うマネージャーを押しのけてもらい、
バックヤードで一から事情を説明。
そういう訳で、だからしょうがないんだってば。ヒゲめがねさん。
頭が固いと困ったものだ。

いろんなことがある。
イレギュラーな深夜の長距離タクシーの手配を快く受けてくれたおじさんに感謝。
そして、到着時に奔走してくれたフロントスタッフに感謝。
何よりドキドキしながらタクシーに乗っていらっしゃったお客様、お疲れ様でした。