熊のあぶら

昼間の味噌田楽でのヤケドだが、その話には実は続きがある。

うちのホテルに仙人みたいな人がいる。
自給自足の生活をしていてなんでも作ってしまう。
見た目もヒゲを蓄え伸ばした髪を無造作にくくり、どうみても仙人である。
鼻の下のやけどがどうにもヒリヒリして仕事にならないので、
仕事を中断して仙人さんに相談しに行った。きっといい薬があるに違いない。

すると出てきた出てきた。
熊のあぶら
ラードみたいなもので少しケモノ臭い。
水ぶくれに塗って3分…ヒリヒリは嘘みたいに治った。
今日は熊のあぶらを塗って、明日からは馬のあぶらと蜜蝋とカモミールブレンドした
仙人オリジナル軟膏を塗るように処方されて帰ってきた。
水ぶくれはそのままだが、痛みはない。
さすが魔法の薬だ。

ちなみに花粉症が酷い話をしたら、杉の煎じた汁を飲むように言われ、
そして鼻詰まりが酷い時にはミントティーを飲むように渡された。

熊のあぶらとドライミントを片手にホテルの敷地の山の散策路をてくてく散歩。
あまりにいい天気で、足元に白いイチリンソウとピンクのカタクリ、黄色いタンポポが満開。
上を見上げれば青い空。目の前にはイワナが泳ぐ渓流。
渓流の流れには陽の光がキラキラと反射している。
そこだけ止まった時間と静寂。
もうこの際仕事なんてどうでも良くなり職務放棄。

戻ったらその分早送りのようにバタバタと時間が流れ始めたのはいうまでもない。
たまにはそんな時間もいい。