格子ごしの再会

別に塀の中の人の話ではない。
以前運命の出会いとも思ったネコの話。

私の部屋には格子が付いている窓がある。
換気しようと窓を開けていたら、廊下から聞こえる、ネコの鳴き声。
そっと窓から外を見たら、廊下から1メートル程ジャンプして、その子がしがみ付いた。
格子越しの再会。
どこぞの家の子で結構ふっくらしたつぶらな目のそのネコは
うるんだ目を向けながら、10cmほどの格子の隙間から私の部屋に入ろうとした。

そこで悲しい出来事が起きる。
太めのその子は格子の隙間に挟まってしまったのだ。
前にも後ろにも進めない。
うるんだ目は必死の目に変わり、甘えた鳴き声は切実な鳴き声に変わりパニックに陥る。
なんとかしなければ。
だが、ネコの扱いに慣れていない私、暴れるその子を助けようとしておろおろ。
格子の隙間で宙吊りの彼女は必死に暴れる。
引っ張ろうとしたがひどく痛そうでダメ。
私もパニックだ。
廊下で何となく誰かに助けを求めてみるが誰もいない。
力になってあげたいのに、どうすることも出来ない。

そんな時、テレビの動物救出劇のニュースを思い出した。
警察だった消防だったか忘れたが、とにかく狭い塀に挟まった子猫を助けたものがあった。
どうしていいのか分からない私は110番

…すみません。ネコが…。
緊急の連絡が入る場所だからと叱られ、交番の番号を伝えられ無情にも電話は切れた。
多分自分の車で事故を起こした時よりもパニックな私。

仕方なく交番に電話して助けを求める。
…ネコ、苦手なんだよね。めんどくさそうな声。
苦手とかそういうレベルの話じゃない。
こっちは1匹と1人の救出劇なんだから。
ある意味緊急だ。
助けて、と悲痛な私に取り合わない警察官。

それからしばらくして何かの拍子にすぽっと抜けたらしい。
そのネコは宙吊りから情けなく廊下に背中から落ち、
そして足早に去っていった。

力になれなくてゴメン。
嫌われちゃっただろうか。
せっかくの再会だったのに、なんだかすごく悲しい出来事。