ゲストのフリして

私はフロントにいたのでそうでもないのだが、
ずっと予約の仕事をしてきた人は、
自分のホテルでゲストがどうやって過ごしているか、目にする事があまりない。
例えば料理の内容や手配内容を説明していても、
実際に見たことがないなんて事もざらである。

じゃあ実際に見てみたらいいじゃないか。
そんな単純な発想。
うちにいらっしゃるゲストの多くがそれを楽しみにやってくる。
レストランで出されるシェフのディナー。
今年に入ってウェディング担当が替わって新しいプランナーさんがやってきた。
料理を見たことのない彼女も同席してゲストに混じってそれを食べる事にした。
きちんと予約。支払いはこっそり料理の原価で…。(その辺が庶民だ)

これにはもう1つ目的がある。
誕生日や記念日のゲストに対しての特別手配を実際にしてみること。
デザートプレートにアニバーサリーの言葉をチョコレートで書くデザートアレンジ。
ホールのケーキも頼む事にした。
だが当たり前だが困ったことに誰も誕生日がいない。
新しくやってきたプランナーさんを迎える意味をこめて片方のプレートの文字はWelcome
ついでに何となく彼女が誕生日ということにしてHappy Birthday。

料理は実際にアンケートに書かれた内容を
実際に体験して妙に納得することもあったし新しい発見が一杯だった。
サービスするスタッフの動きや
ひとりでいらしたお客様が退屈しないように楽しませる工夫など
そんな様子を横目でチラチラみながら、素直に感じたこと。
その空間もサービスも料理も、自分のホテルの事を自分で言うのも変だが
なんて居心地がいいんだろうか、と。

アニバーサリーのサービスだが、
実はスタッフがテーブルに何人かやってきて、HappyBirthdayを歌う。
知っていてもなんだか恥ずかしいのだから、
何も知らずに手配をしたゲストはさぞ驚く事だろう。
スタッフが3人やってきてHappy Birthday三重奏。
ちなみに誕生日でもないのに晒し者にされてしまったプランナーさんは
下を向いて小さくなっていた。
後から話を聞いたら、「なんだか嫌な汗をかいた」とのこと。
驚かせてごめんなさい。

翌日からの電話でゲストに料理の説明をする皆の話を聞いていたら、
今までのように決まり文句ではない、私も含めてそれぞれの言葉で説明していた。
実体験することはやはり必要だ。
見たこともよさも知らずにお勧めするよりも、
自分なりの良さを見出してお勧めする方がゲストにきっと伝わるはずだ。

良いと思った事はなんでもやってみる。
多分そんな前向きなスタッフの中で切磋琢磨されて毎日仕事出来る私は幸せ者だ。