春を探しに

山を降りたら、そこは春だった。
空気が土と草の湿ったにおいがする。
肌にあたる風が柔らかく暖かい。
青空がちょっとだけ白く霞んでくすんだ空色をしている。
暑くもなく寒くもない、ぬくぬくとした空気感がたまらない。

久しぶりに用事もあてもなく歩き回る。
春は植物が一斉に命を吹き返す時期。
この時期になると、四季を愛でる慣習のある日本人でよかった、としみじみ思う。

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家の前の空き地で自然に種がこぼれて
田んぼのあぜ道の一角が菜の花畑になっていた。
朝早くからお花畑で日向ぼっこ。

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週末はSLが走るのだけれど、
平日はこんな緑色のレールバスが走る。
近くまで寄せて撮ろうとしたけれど、
迫り来る電車は結構大きく、そして怖い。
この場所、週末は三脚にカメラを据えたおじさんたちが
場所取り合戦するところらしい。










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桜並木は花のトンネルというよりは、花びらのじゅうたん。
スカート姿で地面に這いつくばって写真を撮る私。
ちょうどこの遊歩道に面したお宅で大音量でラジオが流れていて
NHKラジオ放送の男性キャスターが
天気予報で今日は1日穏やかに晴れると話している。
人のお宅のラジオに耳を傾けながら、アスファルトにぺたりと座り込む私。
座り込むだけでは画面が覗けず、
首を深く曲げて、カメラと同じ目線で眺める私。
そんなおかしな姿に夢中で気がつかなかったけど
昼下がりにいい年した女子が遊歩道に座り込んでいる姿を見て
通り過ぎた散歩のおじさんが目をぱちくり。
そこで我に返った私・・・当たり前だ。
ちょうど私の斜め後ろには不審者に注意と看板が。
いやいや、私は不審者ではありませんから。









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ソメイヨシノは散りかけだけど、
八重の枝垂桜が満開だった。
桃色がキレイ。
小学校のときに、そろばん塾をサボって
この農業用水の水路脇の遊歩道で遊んでいた事をふと思い出した。
私が通っていた小学校の当時はひねていた街路樹の桜も
今は立派に育って貫禄すら感じるほど。
考えてみたら、私の記憶にある景色からは
かれこれもう20年も経つのね。
それでも桜はここにあるし、多分もう20年経ってもここにあり続けて
毎年春にはこうして花を咲かせ続ける。

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人様のお宅の庭のチューリップを撮っていたら
勇ましいロングコートチワワにけたたましく吠えられた。
犬に吠えられるのなんて久しぶり。
家人があわてて飛び出してきて、吠えたその子を叱っていたけど、
ちゃんと番犬の役割を果たしていただけなので叱らないで、と
内心思いながらそそくさと退散。やっぱり私不審者かも。




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最後に帰り道に夜桜。
山を登る手前の釜飯で有名な横川サービスエリア。
この辺りはちょうど満開。
この満開のサービスエリアを後にすると、あとはひたすらトンネルをくぐって
春の訪れを待ちながらも、まだやってこない私の日常がある。