小谷村露天風呂

糸魚川市から松本に抜ける国道148号線
トンネルが続く山をぬうように通っている道だ。
昔は日本海から松本方面に牛が塩を背負って山道をせっせと歩いていた。
別名塩の道・千国街道と呼ばれている。

その国道をそれること約20分で小谷村温泉がある。
山と山の間にあるこの村では土砂崩れが頻発しているらしく、
そこここで復旧工事中。
まだ完全でないその道は夜間通行止めになる。
小谷温泉は3軒の鄙びた湯治宿の小さな温泉で、
近くの雨飾山の登山客が利用する事が多いらしい。

砂利の駐車場に車を停めて歩く事数分、ブナ林の中に目指す露天風呂。

先客が一人。
関西弁のような聞きなれない言葉で一人でなにやらプリプリ怒っている。
何事かと思っておそるおそるうかがってみたら
そのおばさんが入る前の人が源泉が熱いという理由で大量に水を投入し
更にそのまま出てしまったとかで、
おばさんが入ったときにはほとんど水になっていたのだそうだ。
源泉は50度ぐらい。熱すぎるぐらいのお湯のはずなのに確かにぬるい。
プリプリ怒っていたのは、
水ホースをはずし、源泉ホースを引っ張って一箇所にまとめ、
必死に温めようと悪態をつきながら孤軍奮闘中だった、というわけ。

どことなく瀬戸内寂ちょうさん似のおばさんは
岡山からいらしていて、一昨日八ヶ岳に登り、そして明日は雨飾山に登るのだとか。
山登りのハシゴなんて、タフすぎる。
長野のほかの温泉もあちこち行っているようで、
以前私が気に入った温泉の事も知っていて、妙に意気投合。

一人で考え事をしながら浸かる温泉も好きだけど、
温泉の中だからこそ出来る見知らぬ人との他愛もない会話も結構好きだ。
見知らぬおばさんとの湯もみ共同作業で、1時間程で元のお湯は温かさを取り戻した。

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元気一杯のそのおばさんが出てしまったら
びっくりするぐらいに静か。
見上げればブナの葉の間からの木漏れ日がまぶしい。
風が吹くと枝や木々がすれてサワサワと優しい音を立てる。

ずいぶん長い事つかっていたせいで
かなりのぼせているのだけれど、
久しぶりに上がってしまうのが
『もったいない』と感じるいい温泉だった。