作業とサービスは違う

安い宿は嫌いじゃない。
安い分期待もしない。
だから失望もしない。
泊まれたらそれでいい。

逆に鄙びた宿なんて、その味が出ている具合が良かったりして。

先日泊まった激安1泊朝食付き5250円の宿。
どうしてそんなに安いんだろう?という疑問を持っていったものの、あっさり解けた。
買い取った保養所の施設、設備、そのまま手を加えずに丸のまま利用しているから。
そして人件費は削れる限界まで削ったから。
なーるほど。

だけど妙に鼻に付く一面も。
低価格でご利用いただくため、過剰なサービス(お部屋食、布団敷き・・・)を避け
必要なサービス(誠意ある対応、清潔感のある客室・・・)に注力することで(中略)
一生懸命に努力しております。
渡された1枚の案内書に書かれてあった文言。

そのサービスが過剰か必要かどうかの判断は、それはお客がすること。
そして必要なサービスを提供している、とホテル側が言い切ってしまうと、
今度は本当に必要なサービスは提供されているか、何だか逆に注意してみてしまう。
人件費を削ったせいで人がいない。そのせいもあってかそもそも気付かない。
すいません、と5回ぐらい大声で声をかけてやっと気付くスタッフの方。

多分何も言われなければ、何も気にしない。
値段が安いんだから、そうだよね、と思える。
だけど、『安い上に必要なサービスは提供している、どうだ、参ったか』と
胸を張られた途端にあら捜しをしたくなる私。

朝食の片付けをしていたうんとズボンを下げていた男性、
チェックアウトが終わった途端に全部電気をパチパチ消して
でかでかと胸元にUSAと書かれたトレーナーにハーフパンツで現れたフロントの男性。
(もしやチェックアウト時カウンターで隠れて見えなかったけど、足元ハーフパンツだったのかも・・・)
彼らは何を思って仕事をしているんだろう。楽しいんだろうか。
目の前に下げる皿があったから厨房に持っていった。
カウンターに人が来たから鍵を渡した。
彼らは一通りの作業はしているし、サボっている訳でもなんでもない。
だけど全然楽しそうじゃなかった。
ただただ無機質に機械的に動いていた。
サービスエリアのフードコートで働く方たちの方が数倍楽しそうだった。
フロントなんて、きっとチェックイン時にお金を払ったら鍵が出てくるような
自動券売機みたいな物を置いた方がよっぽど効率的なんじゃないだろうか。

そもそも一般論として仕事が楽しいと思ってやる人自体少ないんじゃないのか、
という話もあるけれど・・・

部屋にアンケートがあった。
最初から評価するつもりもなかったし
良い、悪い、ずばり今回の滞在は何点か?・・・さまざまな項目があったが私は何も書かなかった。
その代わりに一言だけ書いた。

『作業とサービスは違うと思います。』

せめてもう少し楽しそうに彼らが仕事をしてたら・・・
帰り際の私の中にあった心境は憤りとか失望とかそんなんじゃない。
ホテルの仕事が時間も不規則だし、労力的にも精神的にも大変な仕事だということは
痛いほど分かってる。
だからこそ、全く楽しそうじゃない彼らの日々って、
苦行以外の何物でもないんじゃないかなって。
なんだかいたたまれないような、残念な気持ちで一杯。