距離のとり方

スーツに合わせられる仕事用のパンプスを全て捨ててしまったので、
適当な靴を買いに富士山の街にあるアウトレットへ。
軽井沢でもそうだったが、
アウトレットが近い場所って結構便利だった事に今更ながらに気がついた。
ここに集まる人たちは大半が観光の帰りに立ち寄ったり、
わざわざ休みの日にこれを目的に来たりしているのだから。

そこの靴屋さんで、久しぶりに刺激される店員さんに出会った。
私は店員さんとの対話は面倒なので、
必要だったら声をかけると、シャットアウトしてしまうのだが、
その方それを察してか、靴を履こうとした瞬間にそっと靴べらを差し出した。
そしてあれこれ試す私に、うるさ過ぎず必要なタイミングで必要なだけの声をかけてくる。
気がつけば、どうしたらいいかこちらから相談して勧められたものを購入していた。

それからお包みしますのでしばらくお待ちください、という声に
他の靴をいくつか物色しながら待っていたら、
これ、お勧めなんですよ、と先ほどの店員さん。

話すうちに春の服に合わせられるベージュの靴が欲しくって、と
私の潜在的なニーズまできちんと引き出されていて、もう1足購入しそうになっていた。
・・・おっと危ない。すっかり彼女の術中にはまっていた。
さらに靴に合わせてカバンはいかが?と売り込み上手ときた。
うーんちょっとうるさいかな?と思ったらそこですっと引いた。
そこでカバンに目がいったせいか、一人で見るうちに気に入ったカバンを見つけて
危うくカバンまで買うところだった。

最初から踏み込み過ぎればゲストは引いてしまう。
距離のとり方でその人にとって快適な距離を保った上で、
相手が心を開いてくれれば、後はそこから話をすればいい。
踏み込むのを恐れて通り一遍の案内だけしていては、ゲストはつかめない。
その距離をきちんと意識出来ているこの店員さんは凄いなぁ、と。
当たり前の事ではあるんだけど、意外にそれが出来る人って少ない。
久しぶりにそんな事を意識した。

もっとも私も私でその店員さんにとってはいいカモさんだったのだろうけど。
気に入った靴が買えたのでとりあえずご満悦。