初めの一歩

フロント歴5年半。予約歴2年半ぐらい。
レストラン歴 フロントと同時進行で和食のみ1年ほど。

私のホテルのお仕事経歴である。
ただ、フロントの中には、ウェブサイト作成やら営業やら広報やら開業準備、
そして予約の中には顧客管理や総支配人秘書のようなものまで・・・
また、予約という部署がなくフロント業務をしながら予約を取る職場もあったので
2年半というのはきちんと予約という部署にいた期間のこと。
あ、あと布団敷きと洗い場、客室清掃もちょっと。

そんな中で、私が一番好きなのはフロントの仕事。
でも・・・実際仕事として一番成果が上がるのは電話応対なのかなぁと思ったりもする。
私は声が恐ろしく通る。
電話で先方が聞き取りやすいというのも理由のひとつだが
下準備でお客様に先回りして仕掛けるのが得意だというのが大きな理由。
当日の手配で出来る事って意外と限られてしまう。
予約って無限に先読みして動けるし。

乗り物の手配は?ゴルフは?テニス?
ここに行くならパンフレットは?現地でのレストランの手配は???
旅行のプランニングまで頼まれればよろこんでやりましょう!というところ。
誰もそこまで依頼してくれる方は多くないが。

だけど、電話応対で私の最大の欠点が早口。
人って焦れば焦るほど早口になる。電話での早口は致命的だ。
何やら面倒な手配だったり自分の分からない事を聞かれた時、
どうしよう!えーっと・・・そう思うあまりに会話の速度はいつの間にやら倍速モード。
だから、電話でお客様と話す時、一般的には20-30%ゆっくりめに、というけれど
私はいつもの半分以下の速さでしゃべるように心がける。

同じ言葉だが、『ありがとうございます』や『かしこまりました』
ゆっくり、ありがとうございます、と言われるのと
早口で、ありがとうございます、と言われるのとでは、受け手の印象は大きく異なるように思う。

ゆっくり言われた方が、丁寧に聞こえ、
早口で言われた方は、声質やトーンによっては、事務的に聞こえはしないだろうか。
私の場合、非常に声が通り、ハキハキ喋る印象を持たれる事が多いので
早口だとまくしたてて、事務的な印象に変わってしまう。
これは何度もお客様や周りで電話を聞いていた人に叱っていただいたお陰で気づけた事だ。
しゃべっている自分は、何もぞんざいな応対をしているつもりなど毛頭ない。
だけど電話って会話に集中しようとするから、他人でないとこういうものは気が付けない。

そして大事なのは出来るだけ保留にしないこと。
こちらは何かお待たせしている間に調べたりしていても、
ただ保留音を聞かされているお客様にとって待てる時間はせいぜい10秒、長くて20秒。
電話代はお客様持ちだ。
お客様は保留の音楽を聴くために電話代をかけてるんじゃない。
ちなみにこれはお客様に教えていただいたこと。
切られた事もあるし、はっきりそう言われたこともある。
そしてお待たせする、というのはこちらの都合でしかない、と。
…はっとさせられた記憶が過去に。

時間がかかるのなら、保留以外の方法を取る。
後から折り返しお電話する、資料を送付またはFAX、メールで送る。
・・・ちなみに私は。場合によっては必死に調べながら世間話をする。
どんな目的の旅行なのか?季節や気候の話。
だって会話の流れを断ち切りたくないから。
ただ予約を取る以外にそのお客様の人物像や旅行目的を知るきっかけにもなり一石二鳥。

予約の電話って最初の入り口。
ある程度やりとりがあったりお逢いした事のあるお客様に対してのアプローチとはまた違う。
相手は期待とその一方である意味での警戒心を持って電話してくるものだ。
電話を受けるこちらがビクビクしていたら、お客様の警戒心を強めてしまう。
そこで何かしらつまづいてしまえば予約にはならないし、
または最初の印象を悪くしてしまうと
そのお客様に対してのホテルの印象はマイナススタートになる。
そこからその印象をゼロ→プラスにしていくのは思いのほか大変。

最初にお客様の警戒心を解いてもらい、
どんなところなんだろう、自分が行く頃にはどんな景色なんだろう、
何が楽しめるんだろう、そんな期待を膨らませてもらえれば、
印象はゼロ、またはプラスからのスタート。(そうあって欲しいと常々思う)
いらっしゃってからのサービスも当然だけど、
お客様とのつながりは予約や問い合わせの瞬間から既に始まっていると思う。

これってメールでもいえること。
声のトーンもへったくれもないけれど、
事務的過ぎず、丁寧で失礼のない内容であるのはもちろん
何か提案があったり、ちょっと期待を膨らませる一言を添えられるのが理想。

同僚の電話応対に対して余計な口を挟んでしまった後で、
ふとそんな事を考えた。

接するお客様の絶対数が少ないという、
恵まれた環境なのだから、いらっしゃる方一組一組を
大切に大切に、おもてなししたい。
心からそう思う。



でも・・・お客様がうちを知ってくれないことには、電話が鳴らないことには。
何も始まらない。
広告宣伝費が少ないうちのホテル。
売り込みしていただいてもほとんどお願いできない。
媒体に出さないことにはお客様には知って頂けない。
広告掲載ではなくて、どなたか取材にきてください。
オイシイ料理と、おもてなしが掲載料で。(そんなに世の中甘くない)