雀のお松の会話トレーニング

コミュニケーションをとる、ということは、自分の意見を伝える事とは違う。
言いたい事や意思、要求を伝えるという事にも言葉は使われるけれど、
コミュニケーション、会話、という意味では、
自分が言いたい事だけを伝えるだけでは、決して成立しない。

これらに必要不可欠なのは、相手はどう思うか?と
相手の気持ちや状況を汲み取る努力をすることや
表情や見た目だけでなく、発する言葉の裏にある事や
その人の背景まで考えることが大切なんだと思う。
そして、皆が皆、自分と同じ発想、自分と同じ考え方をしないということも
きちんと理解してなきゃいけない。
それは接客以前に、人間関係を作るうえでも大切な事。

フロントで長いこと働いていた私には、お客様と会話をする、という事よりも
相手に必要な情報を伝達する、という方が多かったように思う。
それはその役割分担上必要な事だし、それはそれで間違いではない。

だけど、レストランだったりバーでお客様と話をする、という事においては、それとは違う。
話をしてその場を盛り上げたり相手を楽しませるという事は、
同じ言葉を発するのであっても情報伝達とは決定的に違うように思う。
例えば、料理のメニューを伝える事は情報伝達だが
料理の進行であったり合間にお客様を退屈させないために
料理だけでなく空間、過ごしている時間を楽しんでもらうのは情報伝達だけでは駄目だ、ということ。

自分で提供できるたくさんの話題を持つ事も大切だし、
相手からいろいろな言葉を引き出す能力も要求されるように思う。

最近、自分でトレーニングしている事がある。
例えば、自分で決めた会話のテーマが「相手の職業を聞くこと」だったとする。
ダイレクトに、「どんな仕事をしているんですか?」と相手に聞くのは反則。
それに、まわりくどい言い方してるけどあなたは要するにこれが聞きたいんでしょ?と
相手に悟られても駄目。
天気だったり、その日していらした事だったり、
全然関係のない話題を振りつづけて会話するうちに
最終的に相手から自分はこんな仕事をしていてね、という答えを引き出せたらトレーニング終了。
これを制限時間15分の間で行う。(いつも時間なんて測っていないしおおよそだけど)

意外とやってみると難しいものだ。
まず、会話は脱線するものだ。
自分が聞きたい情報が欲しいと思うなら、会話の主導権は自分にあった方がいい。
だけど、相手から言葉を引き出すためには
相手が心を許してあれこれ話してくれる状況を作らなくちゃいけないので
自分ばかりが話し続けても駄目。
相手に適度に質問しつつ、自然に会話を進める中で欲しい情報を相手から引き出す。
私の場合大抵、練習の場は居酒屋。
練習台はその場で会ったオジサマやオバサマ。

実はお客様と話す上でこれはすっごく役立つ事。
相手のニーズを引き出す上ではこういう技術を身につけている事ってとっても大切だから。
それはプラスアルファの接客をしたいと思えば思うほど、
相手のニーズをきちんと読み取ることが大切になってくるように思う。

かつてのとあるお医者様をされているお客様との話で、非常に印象に残ったことがある。
同じ病名を伝える上でも、患者さんによって伝え方は違う、と。
ある人は、その病名を告知されたらこの世の終わりのように捉えるかもしれない。
ある人は、病名を告知されても、ふーん、なーんだ軽くて良かった、と真摯に受け止めてもらえずに
治療にきちんと取り組んでくれないかもしれない。
だから、患者さんによってアプローチの仕方は全然違う、と。

前者の人には、落胆し、人生を放棄してしまうのではなく、治療に前向きに取り組んでもらいたいし、
後者の人には、楽観視し過ぎて症状を悪化させてしまう可能性があるので
もっと重く受け止めてもらい、治療をきちんと受けて欲しい、と。

そして日々いらっしゃる患者さんは違うので、
相手が自分の発したその言葉をどう受け取るのかを瞬時に判断して会話をしなければいけない、と。
人と接する仕事、というのは、扱う内容は違えど皆同じなんだなぁと思う。

そのお客様とは何となく意気投合してしまい、
だいぶ長いことコミュニケーションを取る事の難しさについて話し込んだ。
何故だかちょうどお客様があれこれ考えていらっしゃったことと
私が考えていたことが丁度一緒だったから。

意外とこのコミュニケーションのトレーニング。難しいけど面白いものだ。

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料理長がお客様と話していたときに、
いつの間にか勝手に、私が『雀のお松』というユニットで芸人デビューするとかしないとか、
コイツはホントいっつもピーチクパーチク言うてますねん、と笑っていた。
・・・てか雀のお松って!(船弁慶、という上方落語に出てくる長屋の女房で、とっても気が強くておしゃべりで有名)そりゃぁ私もいつもピーチクパーチク喋り続けてますけどね。
そして・・・ずばり当たってますけどね。
喜六さん(演目の中でのこのお松さんのご主人)役を募集中です!と言ってやりましたとさ。
お松の私だって、無駄にピーチクパーチクしている訳じゃないのである。