ケセラセラの旅2日目(2) 5分違いのあべこべの電車に乗って

北陸、海鮮食い倒れ紀行のはずだったのだが、諸事情により・・・。
諸事情って、要するに上りと下り、あべこべの電車に乗っただけのこと。
「それだけ」のことだけど、それは凄く大きな事だ。
多分人生の岐路の選択も、こんな風に5分違いのホーム違いの電車に乗るみたいなもので
大きく歩みを変える事も沢山あるんだろう。
電車でまた行きと同じ日本海を眺めながらそんな事を考えた。
 
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せっかくなので、このまま歩みを進める事にした。
これはこれから乗る電車、そして乗ってきた電車。
 
電車って昔はこんなそれぞれの「顔」を持っていたのに
いつしかシルバーボディーにラインだけが違う、
全部おんなじ顔の電車になってしまった。
よく見てみると向こう側の電車は
つぶらな瞳のかわいい顔じゃないの。
ちなみにこの辺りの電車はみんなドアが手動である。
ドアを自分でよっこいしょ、と開けて入る瞬間は、
何となく「おじゃまします」と言いたくなる。
 
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車窓からの景色はいつしかまた見事な雪景色、というよりもふぶいている。
暖房は聞いているはずなのに、ものすごく車内が寒い。
この雪景色も、わぁぁ、と声をあげてしまった景色のひとつ。
大の字で寝転がりたい衝動に駆られる景色だ(風情もへったくれもない発言…でも多分意外と硬いんだ、実はきっと。)
なめらかな表面と時折差し込む光がこんもりとした雪に影をさして何とも言えない。
 
そして松本をこの日の逗留地と決めて、長野駅で乗り換え。
これがまた、ミラクルで、3番線と4番線が同じホームにある。
ホームの中央付近にある階段を境目にして前側が4番線、後ろ側が3番線。
40分も前からこごえる駅で待っていたのに、電車が来ない。
来ないな、遅れてるのかな、なんて思ったら発車のアナウンスが聞こえた。
きょろきょろしてみたら、私が待っていたのはなんと4番線側の方。
手前と奥でホームを分けてる駅なんて聞いた事ないけれど、ミラクルな現実。
もうすでに満員電車までリュックサックを背負ってホームの端から端までよーいどんっ、とばかりに猛ダッシュ
そのあと1駅分ぐらい息が上がったままだった事は言うまでもない。
 
紆余曲折、というにはいろいろありすぎたこの日。
夜は松本の街へ繰り出して居酒屋のマスターと意気投合して
豪快に笑い、食べ、飲み時間を忘れるひととき。
ここでは写真を撮らなかったのだけれど、「のれそれ」がお通しで出てきた。
この「のれそれ」、実はこの日初めて食べたのだがよく知っている食材のひとつ。
 
「早春の海の珍味で、透き通った葉のような形をしており、
ツルンとした不思議な食感の正体はアナゴの稚魚(幼生)でございます。
土佐など南国の漁師さんはこれが食卓に出るとまもなくやってくる春を感じる、という
早春の味覚でございます」
 
実はこんな文章を、去年の今頃、メールマガジンで流している。
それが何なのかをうまく伝えたくて、必死に調べた事を実際に初めて口にしながらふと思い出した。
(もっとも食べながらも、何の幼生だったか最後まで思い出せなかったのだが)
しょうがが入った酢醤油で食べる、白魚のような不思議な見た目のこの「のれそれ」。
一口食べた瞬間に当時のいろいろな事を一気に思い出した。
記憶の引き出しが開く瞬間というのは、すごく些細な事からだったりする。
このアナゴの幼生の事、「レプトケファレス」という。
学術名なんぞをわざわざメルマガに書いても仕方ないので、書かなかったものの、
たったあれだけの、料理の一品の説明文にそんなことまでこつこつ調べて、書いていたのは
やっぱり手を抜きたくない私の「やり方」だったんだろうなぁと思う。
それと同時に効率が悪い性格だなぁ、とも。
 
この「のれそれ」とちゃんと対面出来た事は私のものすごい収穫だったのかもしれない。
何となく、いろいろマスターと話し、笑いながら頭の中でそんな事を考えた。
多分松本に行く機会があったら、また必ずこのお店に行くだろう。
長野も海なし県だけど、北陸、新潟に近いという立地のせいか魚介類は絶品だった。
もっとも、それを成し遂げるにはひとつ大きな問題がある。
またこのお店に辿りつけるかどうか・・・場所がさっぱり分からない。
 
これもまた旅の醍醐味。
まるで私の人生を指し示すかのような、迷走の1日。