マシュマロパニック

この時期になると思い出す。

去年のちょうど今頃、ある女優さんが泊まりに来た。
顔の小さい華奢な人で、ど派手な服装もさることながら、
体全体から発するオーラみたいなのが感じられる人だった。
深く帽子を被っていても、一般の人でないとすぐ分かる。
(つんけんして話をするとものすごく嫌な感じだったが…)
目立たないよう夕食はレストランでなく個室を用意したのだが、
その個室にある暖炉で、マシュマロを焼いて食べたいと言い出した。

マシュマロなんてある訳がない。
第一、何で焼くんだ?どんどん焼きか?無病息災?
だが食べたいと言う以上用意しなければならない。

都内なら、マシュマロなんてそう苦労せずに探せただろう。
だがここは山の中。店だって限られる。
リゾートとは言い換えれば一歩離れればただの田舎である。
片っ端からコンビニやスーパーに問い合わせて、マシュマロの在庫を確認する。
だがマシュマロなんて普段馴染みのあるお菓子でもない。
意外に置いていないもので、3軒、4軒と電話して断られの繰り返し。
最後の1軒でやっと見つけて、車で40分走ってやっとマシュマロを入手した。

だが…実物を見て頭を抱えた。
確かにマシュマロなのだが…。
パッケージがまずダメ。輸入菓子のようなオシャレなパッケージではなく
ピンクのキティーちゃんである。
しかも―イチゴゼリー入り。致命的である。
とにかくそれしか手に入らないのだから仕方ない。
レストランマネージャーと相談し、小奇麗な皿に盛り付けて誤魔化した。

想像した味とは違ったようだが、とにかく場は収まった。
それ以来、その女優をテレビで見る度に、マシュマロの苦い思い出がよみがえる。