私には止められない

料理人には気難しい人が多い。
自分の仕事に妥協を許さないからだ。
だから経営者側の意図と合わない事もある。
例えば納得のいく良いものを出したいと思えばコストがかかるし、
コストを抑えれば、納得の行くものが出せなくなる。
うちのシェフは妥協を許さない。
いい加減な仕事なんぞ出来るか、というのがシェフの弁。
いい加減な仕事が出来ないばっかりに、たまにヘソを曲げて大喧嘩をしてしまったりする
困ったガンコ親父だが、私は結構好きだ。
ストレートに物を言ってくれるので、
私の接客や上司に対しての話し方について叱ってくれたり、
料理についての考え方やいろんな話を聞かせてもらったり
たまには馬鹿な話もしたり。
とにかく結構仲良しである。
(仲良しと言うには私はだいぶひよっこ過ぎるのだが)

今回のおかしな気まぐれ人事異動に翻弄されて、3月いっぱいで辞めてしまうらしい。
ちょっと話をする機会があって、辞めてしまうのかと単刀直入に問うたら、
いろいろ今まで抱えていた不満や納得のいかないことの出てくる事出てくる事、
気が付けば2時間が過ぎていた。

そういえば去年の私の誕生日に、シェフとパティシエが画策して
闇バースディケーキ(中に目玉焼きが入ってた!)を作ってくれたっけ。

辞めてしまうのは悲しい。悲しいが、仕方ない。
私自身も今の会社に納得いかず去ろうとしているのだから、
シェフを引き止められるだけの言葉はない。
私には話を聞く事しか出来ない。なんだか歯がゆい。