職業病

たまたま週末3連休だったのだが、次の日曜日に旅行に出かけることになった。
行き先は長野。諏訪と蓼科である。

姉が長野に住んでおり、母が姉のところにシラカバの枝をもらいに行くための、いわば私は運転手。
旅行はおまけだ。
ちなみにシラカバの枝は水に漬けて皮を剥ぎ、その皮でオブジェを製作するために使われるらしい。
残念ながら絶望的に不器用な私にそんな高度なものが作れる訳がなく、作るのは勿論母である。
とにかく今回の主役は母なのだが、せっかく泊まりに行くのなら
小さい頃家族旅行で行った事があった扉温泉の明神館で…とかそんな事を考えていた。

自分がそういうリゾートで仕事をしている割には、
私は他の所でサービスを受けるゲストの側になった事があまりない。
テルマンの安月給では経済的に追いつかないというのが最大の理由なのだが―。
中途半端なサービスを受けるぐらいならいっそのこと
山小屋みたいな安宿の方が気楽でストレスがたまらなくていい。
やはり職業柄、相手のサービスを「仕事の目」で見てしまう。
ゆえに、自分ならこう言うのにとかこうするのにとか、相手の動きが気になって仕方がない。
部屋やパブリックスペースの清掃がきっちりしてなかったりすると最悪。
自分で掃除を始めてしまう始末だ。
あぁすればよくなるのに、あそこはこうした方がいいのに…なんだか逆に疲れてしまう。
落ち着いてサービスを受けられないぐらいなら、
最初からホスピタリティという概念がなく、お湯や環境や歴史で勝負!という方がましだ。
だから実際泊まりに行く場所はものすごくひなびた温泉宿みたいな所が多い。
今回も、結果的にそんな感じで山奥の一軒宿に泊まることにした。
シラカバの豊かな森とひなびたかけ流しの温泉が目当てである。

ところで明神館はというと…母の大反対にあいあっさり却下されてしまった。
料金が高いとか、宿が嫌だとかそんな理由ではない。
以前父の運転で家族で行ったときに、行くまでの細い道で
対向車とドアミラーを当てそうになりながらすれ違ったのが
その道での恐怖体験がトラウマのようになっていて
二度とその道を通りたくないというのだ。…意味不明である。
確かに私の運転も父以上に怪しいけれど、
行くまでの道路の事で猛反対されたら元も子もない。

霧が峰キスゲももしかしたらまだ見られるかもしれない。
ひなびた温泉宿だが、長距離ドライブと温泉、ちょっと楽しみである。