ブランコに揺られて

今日も森へ。
食事をおえていそいそと森の中へ出かけていったら
ばったり支配人に会った。
何故かちょっとお互い気まずい。

私は休憩中とはいえ、森の中に消えていく姿はさぼっているようにしか見えないので
なんとなく後ろめたい気がする。
だが支配人が一瞬だけ気まずそうな顔をしたのは何故だろう。
不思議に思いながら一言二言話して、私は森へ。支配人は建物の方へと戻っていった。

支配人が後ろめたかったその答えは―。
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木の枝にロープを巻きつけてブランコ2つが作られている。
結構童心に返ってこっそりブランコにのるゲストも多い。
誰も乗っていないその目の前のブランコが揺れていた。
考え事をしたいとき、私はその森のブランコで1人揺られることがある。
支配人もきっとそうだったのだろう。

とりあえず鉢合わせなくてよかった。
ブランコに乗る支配人はちょっと見たくない。

そんなお茶目な支配人を想像したら、私もブランコに乗りたくなった。
散策路から少し外れた木陰にももう1つブランコがある。
ここならゲストの目に触れることはない。私の休憩時の隠れ家。

ゲストがいないかまわりを確認してブランコに乗る。
地面を蹴って大きく漕ぐ。
風を感じながら前へ、後ろへ。
夢中になって漕いだせいで汗だくだ。
あ。そうだ、私仕事中だったんだっけ。

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我に返り乱れた息を整えてから戻ろうと川辺の石に腰掛けたら
足元に大きな緑色の実がいくつか落ちていた。
みたこともないその実をなんとなくポケットにしまって楽園から現実へと戻る。

その実の正体はクルミ
地面に埋めて緑色の部分を腐らせると、お馴染みのクルミの殻が出てくるそうだ。
大切に家に持ち帰ったけれど、この実、どうしよう。