表と裏と

うちの客室にはゲストコメント、いわゆるお客様アンケートの用紙が入っている。
書いてくれる人の絶対数はそう多くはないが、月当たりにして大体30通ぐらい
何かしら評価したり感想を書いてくれたりする。
その他にメールでお礼をくれる人、丁寧に手書きで便箋に綴ってくれる人。
中には季節の絵手紙を書いて送ってくれる人もいる。

とりまとめ役になっている私の特権だが、それらを誰よりも早く読める。
システムに入力したりお礼状を書いたりそんな諸々の処理があるからだ。
ゲストコメントを残していく人達は、すごく感激した人か、一言物申す!という人か両極端。
だから、何となくその日に起きた事件とか出来事がそれらを読むと想像できる。

それからインターネット上で自分のブログやHPに書いてくれる方も沢山いる。
これらも出来る範囲で調べてスタッフに掲示している。
ネットでは匿名だけど日付や部屋が分かれば、履歴を辿れば誰が書いてくれたか何となく分かる。
なんかなんとなく得した気分。

表にいた頃は毎日ゲストに接していたのに、ゲストとの距離は遠かった。
部屋に案内してしまえば、ゲストに必要とされなければなにかを話したりアプローチすることはない。
そして案内している間は、意外にこちらから伝えなければいけない事が沢山あるので
実際にはそんなにゲストと会話を楽しむ余裕はなかったりする。
だけど、予約の電話の時は必ず名を名乗る。
そして、部屋タイプをどうしようか悩んでいる人と30分以上も一緒に相談にのることもあるし
気が付けば予約の事からお嬢さんの結婚式の話にそれてたりすることだってある。
お礼状だってそうだ。頂いたコメントを読み返してその内容で返事を書く。
苦労して作ったモミジの押し花を大切に入れて封をする。

だから、フロントのいちスタッフとして、ゲストと接していた頃より
予約の「ぬっこ」としてゲストと接している今の方がゲストとの距離は断然近い。

顧客管理の仕事もそうだ。
あるゲストの名前があがったとき、私はその人の仕事やどの地域に住んでるか、
趣向がすらすらと出てきて自分でも驚いた。
人によっては冷蔵庫のミネラルウォーターの種類を指定する人だっている。
それらの情報はシステムに蓄積させていくんだけど、
入力している本人の頭の中にも自然に蓄積されてしまうこともあるみたい。

今、ゲストと顔を合わせることは正直あまりない。
だけど、気持ち的には前よりもゲストに近いところにいるような気もする。
顔は合わせないけど、私はゲストの事をよく知ってる。
なんだか不思議。