人間くさい

うちのホテルには接客マニュアルのようなスタンダードを設けていない。
研修の制度も充実しているとは言えないかもしれない。
それでももてなす側として当たり前の事は皆こなしていると思う。

だがその当たり前だと思う事が当たり前ではない事が沢山あるのかもしれない。
例えば、フロントのスタッフやレストランスタッフ以外の
植栽を手入れするスタッフやハウスキーピング、ドライバーも
皆ゲストに会ったら、こんにちは、と声をかける。
それは敷地にいる方を迎える意味では当然の事。
そう思っていたのだが、意外や意外当然でもないのかもしれない。
先日、行ったホテルで外で作業していたスタッフの様子をしげしげと眺めていた私に対して、
この人はいったい誰なんだろうという感じで私の事を不思議気に遠巻きに見ていたスタッフ。
そこで相手からこんにちは、と声を掛けてもらえたら、私だって何か話しかけたかもしれない。

逆にマニュアルがある事で、それ以外の事が出来なくなるのか、
それともそれ以外の事をしてはいけないのだろうか。
うちのホテルの場合、マニュアルがない事でそれぞれが伸び伸び接客する。
だってテープレコーダーみたいにみんな同じ事を言っていたらそれは面白くない。
せっかく人が人に対して接するのだから、会話しなければ。
もっともマニュアルがない事で事務系の業務がおざなりになって
面倒な事は風化してなくなるという別の悪い面もあるのだけれど・・・。

画一化されたサービスというのは、最低限必要な事かもしれないけれど、
多分おもてなしをするとかホスピタリティとか何かプラスαって
もっと人間くさい物なんじゃないかなぁと思う。

そんな私だが、出た電話の相手が一体誰だろう?と業者かゲストか判断がつきかねて、
挨拶に戸惑っていたらそれを見抜かれて、ゲストに叱られた。
やっぱり挨拶とか第一印象ってすごく大事。
なんとなくそんな事を自分の失敗からふと思った日。