ホテルの仕事って99%の地道な努力と1%の華やかさだと思う。

ホテルの仕事って、表舞台で華やかそうだというイメージを持つ人もいるかもしれない。
(私は裏方の話ばかり書いているのでそんな風に思う人いなそうな気もするけど)

接客する華やかさは業務のほんの一部。
お客様の荷物を笑顔で飄々と運ぶけれど、実際20キロ近いスーツケースなんてざらだし、
掃除だったり片付けだったりそんな事ばかりだし。はっきり言ってキレイな事ばかりじゃない。

最近中途採用にしろ新卒にしろ入ってくる人たちは、
皆会社の経営志向やマーケティング論に共感を受けて入ってくる人が多いせいか
どうも現場軽視の人が多いように思う。
確かに経営者としての目というのは現場でゲストと対峙する感覚とは違う。
だけど、それとは別に、ゲストの前に出て最前線で働く人たちがいて初めて
利益が生まれる訳だし顧客満足度を計る数字だって出てくる訳で。
ゲストありきのこの仕事。

多分個々のスタッフが、目の前のゲストを
どうやって喜ばせるかって考えながら仕事をすることが全てもの源だと思う。
仕組み作りもマニュアルも大切。
でも全てはゲストを思う事から始まるように思う。
どうやって喜ばすか、という部分は演出の仕方だと思うし
それぞれが演出家になるためにはそこには仕組みもマニュアルも存在しない。

私はいつもゲストの前に出る時に水鳥みたいでいればいいと思っている。
水鳥は水面から上は優雅そうにスイスイ進んでいくけれど
水面下では、必死に足を動かし続けていて、決して何もせずに前に進んでる訳じゃない。
この仕事もきっとそう。
ゲストにとってみれば、当たり前の快適な環境を作るために
ゲストが来る前に絶対見ないであろうソファーの背もたれと座面の間にまで手を入れてゴミを払ったり
普段見もしないような天井の隅っこのクモの巣をチェックしたり、高い窓枠の上の埃を拭きあげる。
一朝一夕にはその環境は作れない。
例えば老舗旅館のピカピカに磨き上げられた手すりや廊下は
今まで何百回、何千回とキレイに保つために磨きこんだ賜物だと思うし
またものすごく重い荷物も、いかにも運んでいる風ではなく軽々と持ちながら笑顔でご案内して、
それを運んでるのを感じさせないのが多分大切。
部屋にご案内されて長い移動時間を経てようやくふと一息ついて、ソファーに座って
ああタバコが吸いたいなと思った瞬間に、どこからともなくすっと灰皿が出てきたり
部屋で上着を脱いだら、もうそれを見越してハンガーを持って後ろにすっと回っており
クローゼットにおかけしましょうか?と一言。
テラスでお茶を飲んでいてちょっと肌寒いかなぁなんて思ったら、
何も言わなくても、膝掛けが出てくる。
何事もなくゲストが滞在するその裏では、環境づくりをするための膨大なチェック事項と
そしてゲストが次にどうしたいのかを予測して先周りして行動する目が必要。

言われた事を言われたようにこなすのは最低限。
それはプロとは言わない。
なんて偉そうな事を言ってもゲストの動きに気がつけずに反省する事しばしばなのだが。
だからこそ日々成長が必要なのだろうし、答えもゴールもない仕事なのだけど。