早起きは三文の徳

日がな釣りばかりしていてこいつ仕事はしているのか?という疑問をお感じの方(これはいそうな気がする)
そして、ホテルは大丈夫なのか?とご心配の方(これはそう多くはいないだろう)

実は中旬までリニューアル休みなのである。
板前さんたちが忽然と姿を消してまもなく半月。
急遽いらして頂いたシェフに和食を作ってくれという訳にもいかない。
調理器具だって違うし取引先の業者さんだって変わる。
今はそんな準備期間・・・。
休みとはいえ電話番で出勤はしていて、
あれこれ事務作業をしたり業者との打ち合わせなどあったりするものの
終日のバタバタは、すっかり「なり」を潜めていて、
ちょっとわっしょいカーニバルが恋しい今日この頃。

今朝は朝3時過ぎに目が覚めてしまった。(オジイチャンか?私は。)
早起きついでに、まだ暗いうちに沼津港に行って釣り。
いつものアオリイカのポイントに通じる堤防の段差を降りる
木のはしごが撤去されていて行けないので、仕方なくいつもとは違う場所でやることにした。
明るくなるまでイカ釣りをして、その後静浦にでも移動しようかなぁなんて
ぼんやり考えていた矢先。
どうもひとりで釣りをしている私が珍しいのか、いつも誰かに話しかけられる。
今日話しかけてきたのは、珍しい緑のパッケージ、なくなった祖父が吸っていた
ゴールデンバットを愛煙されている3ヶ月無職だよ、と笑うオジサンと、
白い長靴を履いて漁港の作業をさぼりがてら冷やかしにきたオジサン。

釣れた?
・・・ううん、釣れない。だって私下手だもん。
いつもそんなやりとりから始まるのだが、
今日はいつもの場所じゃないしあまり気乗りしない。
だから釣りよりもオジサンとの世間話ばかりして手が休みっぱなし。

そんな中で大きな船からどんどん魚の水揚げが始まる。
沼津港って意外と大きな船も入るのね、と驚きながらあれこれおじさんに質問。
あの戻ってきた船はそんなに沢山積んでないね、だって船があんまり沈んでないもん、とか
あの船とこの船はセットで動いてて、魚を積む船と、魚を獲る船と・・・などなど。
船って前後だけでなく左右にも進めるんだ・・・とか
そんな不思議に思ったことをぽつりぽつりと質問。
足元にいるヌシみたいな黒鯛や、ハコフグ、ボラの大群を見ながら、
あれこれ世間話すること1時間。

おじさんは既に船を下りてリタイヤされているそうだけど、
昔は360キロもあるマグロを揚げたこともあるんだとか。へぇぇ。

この際釣りなんてどうでもよくなってしまい、
明るくなって始まった魚の水揚げの様子を見せてもらうことにした。
だってこんなのって社会の教科書でしか見たことないもん。
海なし県で生まれ育った私には新鮮な光景。
急遽大人の社会科見学に目的を変更。

大きな船底には、獲ってきたサバがてんこ盛り。
ゴマサバ、おなかが虹色に輝いているヒラサバ、
それに混じってアカサバ、真イカ、アジがいる。

イメージ 1イメージ 2
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それらを人が何十人も入れそうなおっきな網ですくって、
(これは船についた機械で操作する。)
一旦陸の大きなプラスチックの箱へざばっと開ける。
そこから人の手で魚の種類を選別しながらベルトコンベアで流されて
氷漬けにして発砲スチロールで箱詰めされて
セリにかけられて売られていく、という流れのようだ。

でも何百、何千といる魚たち、これらがここから各地に旅立っていくわけだ。
市場の外では近県の大型トラックが待機している。
ふむふむ。

そんな流れを興味深々で見ていたら・・・
ひょいっとこれやるよ!と・・・作業中のオジサンが40cmを超えるゴマサバを投げてよこした。
更に、あ、これもこれも!と見たこともないほど大きな40-50cmのアジ。
氷詰めして持ち帰りなよ、と言われて
車から慌ててクーラーボックスを持ってきたら、
氷の塊を豪快に割って詰めてくれた。
こんな立派な魚、買ったら高かろうに・・・。

漁師さんたち、みんな優しいのね。というよりも、
朝からふらりと女子一人で水揚げ見せてください!なんて来る人多分いないだろうから
よっぽど珍しかったに違いない。
作業しながら、どこから来たの?なんて
あれこれ沢山のオジサンたちに話しかけられながら、真イカも追加してくれた。

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ちなみにこの赤い魚、夜の女王という名前なんだよ、と
ニヤニヤしながらオジサン。
食べたら美味しい?と聞いたらそれは食えないんだ、と。
だって夜の女王は高嶺の花だろ、そりゃ食えねえよ、と
どこまで本当でどこまで冗談なんだか分からない話。
帰って調べたら本当は赤サバというお魚。
身が血のように赤いから本当にあんまり食べないそうだ。
(あれこれ食べてみたい私としてはトライしても良かったかも・・・)

そうかと思えば、お姉さんは独身か?と。
そうだと答えたら、ここには60人も男たちがいるから選びたい放題だから
気に入ったの選んできな!と威勢のいい方も。
・・・んじゃ私をセリにかけてくださいな、私ものすごい高いですよーと話して
ゲラゲラ大笑い。(・・・大ばか者だ)

・・・やっぱりもう今日は釣りはいいや。っていうか食べきれない!
そうこうするうちに出勤するのにもいい時間。(漁港から出勤する私・・・。)

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上の魚がサバ、下がアジ。
サバよりアジのが大きいってあり得ない。
会社に持参して獲れたてのお魚を
シェフに料理してもらうように依頼。
以前いた板前さんにも
こんなお願いを何度かしたことがあったけど、
新しくいらしたシェフにも来て早々、
こんなお願いごと。迷惑かしら・・・。
それにしてもこんなふうにお魚をいただけるのなら、
毎日ボックス持参で行こうかな。
(当たり前だがそう世の中甘くない。)
そんな事してたら、本当にセリにかけられてしまいそうだ。私。