ベーコン屋さんへの道~社会科見学~

ベーコン屋さんの社会科見学。
名前を明かしていいかどうか伺っていないので、
ここでは伏せるけれど、日光のとある無添加ハム・ソーセージ、ベーコン屋さんである。
いつもお世話になっている肉屋さんに、
「課題が出来てどうしても越えられずにいる、
出来れば工場や機械を見せてくれる人はいないか?」と相談。
そこで繋げてくれたご縁である。
 
ひとつひとつ機械を丁寧に説明してくれて
プロには教えない、という秘伝まで明かしてくれた。
 
現実的にお店をもつとなると資本もいるだろう。
だが、残念ながら私には資本と呼べるようなものは一銭たりともない。
そもそも、それ以前に知識もなければ、経験も足りない。
店を出すには「食品衛生管理者」という資格を取らなければいけない事、
それには3年間その業種に従事し、そして1カ月の集中講習を受けなければいけない事。
一朝一夕にはいかない、大変だよ、と諦めさせる為にそれを話してくれたのだろうけれど、
私としてみれば、それも欲しかった情報のひとつ。
好きだと一つの事にのめり込んでいくと、必ず見えてくるものはある。
あれ、この子諦める気なさそう?とそんな表情。
ええ。本気ですから。
 
多分最初の印象は訳の分からない小娘が来たよ、と思われても仕方ない胡散臭そうな私。
でも、私はそこに物見遊山に行ったのではない。真剣そのものである。
この日は店休日。
そういう思いが伝わったのか否かは定かではないけれど、
次回の仕込みの際に、呼んで頂けるお約束をしてお店を後にした。
 
ところで…。この話にもオチがある。
初めての所に押しかけていくのだから…と手土産に果物を持って行った。
車に忍ばせておいて、初めましてで渡すのが通例だろう。
ところがあまりに緊張して舞い上がっていた私。
ごあいさつして機械諸々を見せてもらい、製法をお伺いし、
それでは失礼します、と後にして車を走らせて気が付いた。
わーーーー!!て、手土産!!!!渡し忘れた!
 
仕方ないので。
すごすごと店まで戻り、
「本来であれば最初に渡すべきところ、すっかり舞い上がって緊張して渡すのを忘れました」、と。
正直に謝り、渡してきた。
 
あーあ。やっちゃった。
どこまでも残念な私である。
 
「好きなことを続けていくといつしか点が線になってゆく」そう言った友人がいた。
まだ、線にはならず、ひとつの点が増えたにすぎないけれど、
確実に私にとってこのひとつ出逢いがいつしか財産になるに違いない、そう思った。
 
果たして、こんな無礼極まりない小娘と、今後もこの人は関わってくれるだろうか。
でも私の目が真剣だった事は気づいていただけたはず。